現在の田町駅前のシンボルは、芝浦口側にあるグランパークタワーか。飲食店なども入っているが、オフィスビルのイメージが強い。田町駅周辺には、それなりの商業施設が集まっているのだが、ここへ通勤・通学している人向けであり、わざわざ「田町へ行こう」と思わせるような性質のものでもない。

ただ、慶應義塾大学と田町駅を結ぶルート上には、学生街らしく庶民的な店が集中している。整いすぎた街よりも、雑然とした街のほうが人を引きつける場合もある。高級住宅街でもある港区のイメージとは離れているが、この辺りをアピールする手もあるだろう。学生の気質の違いか、ライバル校・早稲田大学の最寄り駅である高田馬場駅周辺のにぎわいと比べると、こちらはいささか寂しい感じもする。

再開発でどう変わるか

一方、芝浦口側には東京工業大学の田町キャンパスがある。こちらは同校のキャンパス再編の方針により、敷地の再開発が予定されており、2021年2月には、NTT都市開発、鹿島建設、JR東日本、東急不動産の各社と事業協定書が締結されたところである。

再開発が計画される東京工業大学田町キャンパス(筆者撮影)

今後、地上36階地下2階の複合施設Aと地上7階の複合施設Bの2棟が建設され、民間施設として事務所、ホテル、商業施設、保育所、産学官連携施設などが入り、大学施設としては教育研究に使われる計画だ。

建設予定地はまさに駅前。これが複合高層ビルに建て替える「よくある再開発計画」に終わってほしくはない。テナント次第とも言えるけれど、ぜひ学生の街でもある田町らしい、個性を発揮してほしいところだ。

田町駅芝浦口にある放送記念碑(筆者撮影)

今回、田町を訪れてみて、駅前にひっそり「放送記念碑」が立っていることに気がついた。

1925年に、わが国最初の放送電波が発せられた場所だ。東京放送局は、ここにあった東京高等工芸学校(現在の千葉大学工学部)の図書室を仮放送所としてラジオ放送を行った。

こういう歴史を発掘していけば、「ジュリアナ東京」ほどの強烈さは残せないかもしれないが、今は個性がなさそうな田町も、次第に変わってゆくのではないだろうか。

著者:土屋 武之