台湾政府は現在、フェイクニュースを捏造した人に高額な罰金を処している。また受け取ったフェイクニュースを誰かに流しただけでも罪に問われる。何をもってフェイクニュースとするかを、政府という権力機関が判断できることには当然、議論の余地はあるだろう。しかし、台湾の人権団体が異議を唱えているのは、あまり効果の上がらない高額な罰金や特定メディアへの攻撃といった「手段」であって、安全保障や公共福祉を脅かす大量の「フェイクニュース」に台湾がさらされているという問題は共有しており、解決手段として透明性ある情報公開を求めている。それほど切羽詰まった「情報戦争」の渦中にいるという自覚が台湾にあるのだ。

台湾では情報ソースと目的に敏感

フェイクニュース、とくに現在の蔡英文政権に関するものがとてもひどかった2018年ごろ、筆者も個人のフェイスブックでフェイクニュースに事実を列挙して反論したことがあった。すると、多くの「捨てアカウント」の持ち主から攻撃を受けた。こういった攻撃は台湾で「網軍」と呼ばれ、ネット軍隊とでも言えるだろうか。コメントが中国で使用される「簡体字」で記されたり、その内容もかなり汚い罵倒語を使って書き込まれていた。こうした「網軍」によってフェイクニュースが作られ、拡散され、世論が攪乱される。

台湾政治は大まかに言えば、その支持・志向性によって2つの色に分かれる。1つは中華人民共和国に融和的な「藍」陣営と、リベラル的な政治志向をもち台湾の主体性を志向する「緑」陣営(現在の与党・民主進歩党も緑)だが、「網軍」はどちらにも存在する。つまり、台湾では日々熾烈な情報戦が双方で繰り広げられているということだ。

フェイクニュース法規制が敷かれてから、情報戦はさらに巧妙になっている。こうしたことが日常的な台湾では、少なくない人が情報リテラシーに敏感だ。また、メディア側もその報道姿勢が「藍」か「緑」に分かれ、そのソースがどこのメディアかで、その信憑性を各個人が判断する。「藍」側のメディアには多くの中国資本が入っているとも言われる。このような事情から、台湾で暮らした経験があったり、長いあいだ台湾に興味を持ってきた日本人は、台湾に関する記事がどのような目的を持っているかをある程度は判断できるだろう。

しかし台湾への関心がこの数年、急激に高まってきたなかで、そういった台湾に関するメディアリテラシーを日本人の多くは持っていないように思う。台湾に関心がそれほどなかった時代であれば、前述したような記事の影響はごく限定的だったかもしれない。