長く構造不況に苦しんできた日本の造船業界に、ようやく薄明かりが差してきた。

「中国や韓国の造船所の船台(ドック)が埋まっている。船価アップを図りながら受注を伸ばしたい」

7月12日、都内で会見した業界最大手・今治造船の檜垣幸人社長はほおを緩ませた。

今治造船の手持ち工事量は7月時点で、適正水準とされる2年分を超え、2.5年分近くに積み上げている。業界2位のジャパン マリンユナイテッド(JMU)も同様に受注量を増やしており、業界にとっては久しぶりに明るい話題が続いている。

一時は業界存続の「崖っぷち」に

足元の業績も回復している。今治造船の2021年3月期の売上高は3712億円と微減ながら、営業黒字を確保した模様だ(営業損益は未公表。前期は207億円の営業赤字)。JMUなども赤字を縮小させている。

7月の定例記者会見で明るい表情を見せる今治造船の檜垣幸人社長(記者撮影)

背景には、巣ごもり需要の増加に伴う海運市況の改善がある。足元のコンテナ運賃は上昇し、日本郵船などの海運企業は業績を上方修正している。好業績を背景に、これまで抑制していた新造船の発注を活発化させているのだ。今後、ますます厳しくなる排ガスなどの環境規制への対応もあり、排ガス対応の進んだ新造船への需要が増していくのは間違いない。

ここ10年ほど、日本の造船会社は新造船をなかなか受注できなかった。政府の支援を受けた中国や韓国勢が、シェア獲得のために赤字受注に邁進してきたからだ。中国、韓国とも国家主導で造船業界の再編が進み、複数の船を一括受注する「連続建造」が主流になりつつある。個社の造船能力が比較的小さい日本勢は多数隻の一括受注が難しく、苦しい立場に立ち続けてきた。

造船事業は設計から完成まで数年程度の工期を要し、手持ち工事量を2年程度持っていないと「工場を稼働できない空白の時期ができてしまう」(檜垣社長)。造船会社などでつくる日本船舶輸出組合によると、手持ち工事量は2020年6月末に1.05年分にまで減少し、業界存続の「崖っぷち」に立たされていた。