そう主張すると、よく「なぜ最低賃金を引き上げて、企業に設備投資を促さないといけないのか」「消費税を下げたり、財政出動をすればいいのではないか」と言われます。

皆さんもご存じの通り、日本経済は危機的な状況にあります。高齢化が進み、現役世代が減って、社会保障の負担はどんどん重くなっています。それにともない、現役世代の所得は大幅に減少しています。

これから2060年にかけて、現役世代の人口はおよそ半分になります。高齢者の人口は減らないので、仮に高齢者1人を支える負担がこれ以上増えなくても、納税者1人ひとりにかかるコストはほぼ倍増します。賃金が上がらなければ、可処分所得が激減するのは避けられません。

このような状況になっているにもかかわらず、前回説明したように日本の企業は、労働市場で規制が緩和されたことを逆手にとって、人件費を削減してきました。その結果、労働分配率が大幅に低下しました。ただでさえ、高齢者を支える負担は毎年増加しているのに、それを補うための賃金は減ってしまっているのです。

では、企業は労働分配率を下げて浮いた資金を投資に回したかというと、そんな様子はまったくありません。結果、内部留保金だけが増え、その分、経済を支える総需要が減り、デフレ圧力が強くなってしまっています(参照:「企業がケチになった」から日本経済は衰退した)。

改めて言うまでもなく、日本の生活水準、競争力、輸出、賃金、財政の健全性など、あらゆることの将来は国と企業の投資によって決まります。

投資には主に3つの種類があります。研究開発費、設備投資、人材投資です。順番に検証していきましょう。

日本の「研究開発費」は世界12位に低迷

まずは「研究開発費」です。

OECDによると、日本の研究開発費の総額は2019年に世界第3位でした。GDPも世界第3位なので、一見するとこの順位であれば問題ないように見えます。

しかし、日本の研究開発費の総額はアメリカの28.2%で、中国と比べても33.5%しかありません。常日頃から指摘しているように、日本は世界第11位の人口大国なので、数を生かしていろいろなランキングで上位に顔を出します。しかし、それはあくまでも量を比べた結果で、質の保証にはなりません。

研究開発費の順位を対GDP比で見る人もいます。この比較では、日本の研究開発費は世界第5位まで順位が下がります。ですがドイツやアメリカより上になり、この点を取り上げて高く評価する人もいます。

この基準では、アメリカは3.1%で世界第9位です。アメリカに関しては、株主至上主義を反映して短期的な利益を追い求めるあまり、十分な投資をしていないと言われることがよくあります。一方、日本は長期戦略を重視しているので研究開発費が多いと、つい最近まで指摘されていました。

しかし残念ながら、この話は表面だけを見た俗説にすぎません。