業績悪化を受けて役員報酬の一部を自主的に返上する動きが多くの鉄道会社で見られる。役員報酬の総額における返上額の扱いは各社によって異なる。JR東日本は「自主返上された報酬額を含めております」としているが、JR西日本は「報酬返上後の金額を記載しております」という。

JR東海の有価証券報告書上では、自主返上を行っているという注記のみにとどまり文面からははっきりしない。そこで、同社に確認したところ、「あくまで自主返上であるという考え方から、有価証券報告書には自主返上前の金額を記載している」との回答があった。

ほとんどの会社が役員報酬の総額を減らす中、逆に増えた会社もある。東武鉄道の役員報酬の総額は2019年度から2020年度にかけて1.1%増えた。東武の2020年度決算は売上高が前期比24.0%減の4963億円、営業利益は前年度の626億円の黒字から135億円の赤字に転落した。

このような業績不振の状況下でなぜ役員報酬は増えたのか。同社に問い合わせると、役員報酬のうち、金銭報酬は2019年の2.4億円から2020年度は2.29億円に減額しているという回答があった。その減少率は4.5%程度になる。

つまり、増額分は株式報酬ということになるが、「あくまで計上処理上の話であり、実態として増額しているものではない」(同社)。

金銭報酬の減少に加えて、「2020年7月〜2021年6月に実施した役員報酬の10%の減額は反映しているが、2020年5月〜6月に実施した30%の自主返上分は、あくまでも役員本人の申し出により返上したものであり、数値に反映していない」と会社側は説明する。この自主返上分を含めれば、減少額はさらに増えることになる。

こうした説明の後、同社では以下のように付け加えている。「当社では現在、厳しい経営状況が継続することを踏まえ、2021年7月から20%の減額を行っています」。

「痛み」は従業員にも

阪急阪神ホールディングス(HD)も役員報酬の総額を0.7%増やしている。ただ、同社の有価証券報告書には子会社の阪急電鉄と阪神電鉄の役員報酬の総額も記載されており、こちらはそれぞれ、35.6%減と20.7%減。やはり、経営悪化の影響により役員報酬を減らさざるをえなかったことがわかる。

経営悪化で痛みを受けたのは役員だけではない。従業員の平均年収も落ち込んでいる。平均年収の減少率が最も大きいのは京阪HDの9.8%で、以下西日本鉄道8.7%、JR九州8.7%、JR西日本7.6%、JR東日本6.3%と続く。逆に減少率が最も小さかったのは東急で1.1%という結果になった。

コロナ禍が長引いているため、今期はV字回復という会社の業績シナリオは修正を余儀なくされそうだ。その結果ははたして、役員報酬や従業員の平均年収にどのような影響を与えることになるのだろうか。