東京五輪が幕を閉じた。次の五輪はもうすぐで半年後の2022年2月に北京冬季五輪が開催される。この北京冬季五輪で中国が世界にお披露目することを目指し発行準備を着々と進めているのが「デジタル人民元」である。
このたび『決定版デジタル人民元』を上梓した木内登英氏が、日本人の知らない「デジタル人民元」発行を急ぐ中国の狙いを解説する。

北京五輪でお披露目「デジタル人民元」

2022年2月の北京冬季五輪で世界にお披露目することを目指し、中国は「デジタル人民元」の発行準備を着々と進めています。主要国では初めての中銀デジタル通貨、つまりデジタル形式での法定通貨の発行です。

ところが、その具体的な仕組みや発行の狙いなどについては、依然として謎の部分が多くあります。

中国がそれらを明らかにしないのは、デジタル人民元が国家戦略と深く関わっているからにほかなりません。デジタル人民元の開発が、米中対立が激しさを増し、新冷戦構造ともいえる状況に陥っていることと同時に進んできたのは、決して偶然ではありません。

デジタル人民元はまさに米中対立の産物であり、また、アメリカの通貨・金融覇権に挑戦する中国の切り札でもあるのです。

今回は、そんな「デジタル人民元」発行を目指す中国の狙いを明らかにします。

中国では、アリペイ(Alipay)とウィーチャットペイ(WeChat Pay)という2つのスマートフォンのQRコード決済が、すでに国民の間に広く浸透しています。それなのになぜ、中国はデジタル人民元の発行を急ぐのでしょうか。

中国人民銀行は、2014年にデジタル人民元の研究を始め、2016年には、時期を特定せず、中期的にはそれを発行する考えを明らかにしていました。その発行計画を一気に前倒ししたのは、2019年6月、フェイスブックが新型デジタル通貨リブラ(現ディエム)計画を発表したことが要因として考えられます。

リブラは、主要国の法定通貨にその価値を連動させることで価格が安定するように設計されているのに加え、世界の人口の3分の1程度に相当する利用者がいるフェイスブック関連アプリ上で利用できることから、それ以前の仮想通貨(暗号資産)とは異なり、国境を越えて世界で幅広く使われる可能性が出てきたのです。

しかしこれに対し、先進国の金融当局は、リブラが各国の金融政策、金融システムに悪影響を与え、またマネーロンダリング(資金洗浄)等の犯罪に利用されることを強く警戒しました。