株価が好調だ。日経平均株価は再び3万円台に乗せて、さらに9月14日には31年ぶりの高値をつけた。それもこれも政局の転換に期待してのことである。上昇のピッチを加速させたのは、9月3日に菅義偉首相が自民党総裁選への不出馬を宣言したことがきっかけだ。それが相場活況の原因と考えれば、ご当人の心境はいささか複雑なものがあるかもしれない。

現職不出馬時の自民総裁選は「必ず盛り上がる」

とはいえ、それ以前の市場の読み筋は、「自民党総裁選挙は不人気な菅さんが楽勝するけれども、その後の総選挙では自民党が大敗し、議席数を大幅に減らす」というものであった。

この場合、菅内閣は日本維新の会など野党に協力を求めつつ、低姿勢の政策運営が続くことが予想された。大胆な新型コロナウイルス対策や、思い切った経済政策が打てるとは思えないので、相場もさえない展開が続くとみるのが自然であった。

ところが、菅さんは総裁選への不出馬を表明してくれた。しかもその直前に、これまた不人気な二階俊博幹事長を「道連れ」にしてくれた。これで一気に情勢が変わった。9月29日に行われる自民党総裁選で誰が勝つにせよ、新総裁はたぶん菅さんよりは人気が出るだろう。実際に、ここ2週間のマスメディアは完全に「総裁選モード」であり、野党の存在感が一気に霞んでしまった。これなら続く総選挙でも、自民党はさほど負けないだろう。

さらに言えば「現職が引いた後の自民党総裁選は盛り上がる」という経験則がある。

① 1998年には橋本龍太郎首相が辞任し、世に言う「凡人・軍人・変人」の三つ巴決戦となった。この戦いを制した小渕恵三氏は、尻上がりに支持率が上昇した。小渕首相は惜しくも脳梗塞に倒れるが、それがなければ長期安定政権になっていたかもしれない。

② 森喜朗首相の辞任を受けた2001年の総裁選では4人が立候補した。橋本龍太郎氏優位との事前の観測をひっくり返し、党員票で圧倒的な支持を得た小泉純一郎氏が勝利した。小泉首相は「聖域なき構造改革」を旗印に、長期政権への道を切り開いた。

③ 自民党が野党として迎えた2012年の総裁選では、現職の谷垣禎一氏が再選を目指さなかった。このときは5人が出馬し、最初の投票で石破茂氏が1位になったものの、決選投票で安倍晋三氏が逆転勝利した。その3カ月後には衆議院が解散され、年末には第2次安倍内閣が発足する。そして株式市場は「アベノミクス相場」に沸いたのであった。