その筆頭格が、ソフトバンクグループ傘下のペイペイだ。同社はこれまで消費者向けに大胆なキャッシュバックキャンペーンを実施するとともに、加盟店が支払う決済手数料を無料化することで裾野を拡大してきた。

すでに会員数は4000万人を超え、決済対応箇所も328万を数える(2021年6月時点)。ただし、その代償は大きい。出血覚悟で規模の拡大を追ってきただけに、2021年3月期には731億円の純損失を計上している。

ZホールディングスがLINEと経営統合したことを踏まえて、QRコード決済でしのぎを削ってきたLINE Payとの競争は決着。2022年4月をメドにLINE Payをペイペイに統合する方向で議論を進めており、8月にはLINE Payがペイペイ加盟店で利用できるようになった。

ペイペイとしては規模の拡大に一定のメドがついたため、手数料を有料化して黒字化に先鞭をつけたい考えだ。

一方、競合するKDDIのau PAYやネット通販の楽天ペイは2022年9月まで加盟店向けの手数料を無料にすると発表、ペイペイ離脱組の取り込みを狙う。ペイペイがQRコード決済で盤石の地位を築けるか、今後も注目を集めそうだ。

外資系の買収が活発化

こうした状況の中、業界に変化の荒波が押し寄せている。今年7月にはアメリカのグーグルが国内でキャッシュレスを手がけるpring(プリン)を買収すると発表。9月には同じくアメリカの決済サービス大手PayPal(ペイパル)が日本国内で後払い決済を手がけるPaidy(ペイディ)を買収するというニュースが業界を駆け巡った。

グーグルが買収に踏み切ったプリンは2017年に設立、QRコードをつかった決済や個人間送金のサービスを立ち上げてきた。決済代行などを手がける上場企業メタップスが筆頭株主だ。今回の買収でグーグルはメタップスやミロク情報サービス、日本瓦斯などからの株式を取得し、子会社化した。

今後の展開について、現時点ではプリンのサービスを維持すると発表している。ただ、グーグルは日本国内でもグーグルペイを展開しており、今後は相乗効果を狙った施策が出てくる可能性が高そうだ。

9月に買収が発表されたペイディは約3000億円という金額面でも話題を集めた。ペイパルはこの買収を通じて日本の決済市場で機能やサービスを拡充するという。

今後のキャッシュレス業界を見通すうえで、欠かせないのが流通や交通など分厚い顧客層を抱える業種の動向だ。

2020年12月にANAホールディングスが「ANAペイ」を立ち上げたほか、衣料品大手のファーストリテイリングが2021年1月から「ユニクロペイ」をスタートした。一方で、コンビニ大手のセブン-イレブンは自社のポイントアプリの中にペイペイを導入。バーコードの読み取りが1度で済み、レジでの決済速度が上がるため、顧客利便性が向上する。

こうした企業の狙いはそれだけではない。決済を通じて、消費行動のデータが集まれば、従来よりも適切なタイミングで商品の広告やショッピングローンの案内などを行うことができる。新たな収益機会につながる可能性を秘めているだけに、各社はデータの収集に余念がない。

一方、最大の懸案がセキュリティの問題だ。過去には「本人確認不足」といった問題で顧客の資金が流出したり、不正に利用されたりする事件が度々発生している。2019年には「セブンペイ」(サービス終了済み)が、2020年には「ドコモ口座」がそれぞれ被害にあった。

セキュリティの確保は当然だが、データの利用方法や手数料のあり方について、消費者と加盟店双方からの信頼をどれだけ集められるかが今後の趨勢のカギとなる。