投資家や経営者だけが投資家マインドを持ち、消費者が投資家マインドを持たない構造を放置し続けてしまえば、このマインドの非対称性が格差や不平等を生む原因となってしまいます。

今、都内で販売されているキャベツの平均価格を300円だとしましょう。ほとんどの人にとってキャベツの価値は300円で、たとえば900円だとすると高すぎるのです。では300円である根拠を説明できる人はどのくらいいるでしょう。ほとんどいないのではないでしょうか。

実際には、販売側が需給関係を見ながらこれくらいの価格であれば売れるのではないかという微調整をしながら、一定期間において収益を確保するように値付けを行っています。

その値付けのいちばん重要な要素が、生産者による生産コスト(実際には大きな流通コストが存在しますがここでは複雑になるので無視します)です。

その生産原価はどのように決まるのでしょうか。生産者の人件費や、生産にかかった農機具、農薬、肥料等の費用の合計でしょう。どうして、もっと高価なキャベツを作らないのでしょう。どうしてもっと体に優しいキャベツを作らないのでしょうか。

900円のキャベツを買う人は本当にいないのか

そういうキャベツを消費者が買わないからです。もし、900円の完全無農薬の有機野菜で甘みたっぷりのキャベツしか市場に流通しないとどうなるでしょうか。キャベツの値段は今よりも高いものになるでしょう。すると多くの人にとってキャベツは高いものとなり、買われなくなるのです。

しかし、はたしてキャベツは買われなくなるでしょうか。なぜこの15年ほどで、世界中でオーガニック野菜が普及したのでしょう。それは、消費者が高くてもより安心で安全な有機野菜を買い求めるようになったからです。消費者の行動が企業を動かした事例です。

一度、オーガニック野菜に消費者のニーズがあることが示されれば、企業は大きく行動を変えます。オーガニックの部署を立ち上げ、オーガニックに強い生産者との取引を増やします。

そうすることで、オーガニックの市場が立ち上がり、消費者により多くの選択肢を提供できるようになり、そしてオーガニックの品質を向上させるための投資が増え、消費者はより品質の高いものが買えるようになるのです。

もし仮に消費者がもっと高くても体にいいものを求める消費行動を繰り返せば、世界中から農薬がなくなることだって実現できるのです。こうなれば、900円のキャベツでは買う人がいないということも思い込みにすぎないかもしれません。