一方、7年ぶりの水準である80ドルのWTI原油価格は閾値であり、経済活動にネガティブに影響するという見方がある。ただ、コロナ禍以降のアメリカの財消費の急拡大が牽引した世界経済の回復による原油需要回復が需給を改善させたことが、原油高をもたらした部分が大きいと筆者は考えている。経済回復を先に織り込んで9月上旬まで最高値更新が続いたアメリカ株市場に遅れて、原油価格が上昇したとも言えるだろう。少なくとも、WTI市場などで見られる原油高は、欧州での天然ガス価格のような異様な価格上昇ではない。

また、いわゆるスタグフレーションという言葉が何を指しているかは論者により異なるが、世界的に1970年代に起きたのがスタグフレーションというのが定説だろう。これは、資源価格の大幅上昇よりも、景気過熱局面で刺激的な金融財政政策が先進各国で行われたことが、本質的な原因だと筆者は考えている。コロナ後の経済回復ペースは特にアメリカでは高成長と言えるが、コロナ禍からの正常化の過程にある。1970年代のような大幅な価格上昇をもたらす経済状況には程遠いだろう。

関心は利上げ開始時期とその後のペースに集中

以上を踏まえると、最近浮上したスタグフレーションへの漠然とした懸念は、春先から続いているインフレへの警戒感が行きすぎの領域に入りつつあることの、1つの表れだと筆者は考えている。目先は株式市場の悪材料となる可能性はあるが、アメリカ株式市場の上昇トレンドを変えるには至らないだろう。

一方、アメリカの株安をもたらした国内要因に関しては、今後懸念が和らぐと見ている。まずFRBだが、すでに11月のテーパリング正式開始は織り込まれているだろう。問題は次のステップである利上げ開始を、どのタイミングかつどの程度のペースで行うのかが、株式市場に大きく影響するとみられる。

すなわち、9月FOMC(連邦公開市場委員会)で判明したドットチャート(政策金利見通しの予想分布図)では、ジェローム・パウエル議長らが属するとみられる約半数のメンバーは2022年いっぱいまで現行金利を据え置き、そして2023年からの緩やかな利上げ開始を想定している。残り半数は2022年の利上げ開始に属するタカ派グループで、多くのメンバーはインフレ率上昇が長びくシナリオが念頭にあるだろう。