タカ派メンバーの想定通りにインフレが警戒されてFRBが早期に利上げに動く可能性が高まれば、株式市場が警戒感を強めるリスクが高まる。ただ、筆者はこうした可能性は低く、パウエル議長らの想定に近い経路でインフレ率が2022年以降鈍化するため、労働市場などを重視して利上げ開始には慎重な姿勢が続くと予想している。

もう1つの国内要因は、ジョー・バイデン政権が打ち出している追加財政支出をめぐり議会が膠着して、政府機関が閉鎖するなどのリスクである。こうした中で、10月7日に、債務上限問題については共和党の提案をきっかけに、12月上旬までの時限的な債務上限引き上げプランが上院において可決された。この結果、12月上旬までは、債務不履行に至るリスクはとりあえずなくなった。

12月上旬の期限までに民主党が、財政調整措置によって、長期の歳出拡大プランと債務上限引き上げをセットにする法案可決を目指すとみられる。これを民主党議員の中でまとめられるか、つまりバイデン大統領のリーダーシップが発揮されるかどうか次第である。期限間際まで民主党内の意見調整に時間がかかると見られ、株式市場を不安にさせるヘッドラインが報じられる可能性は残る。ただ、最終的には民主党内の意見調整によって、法案は妥協に至ると筆者は予想しており、いわゆる債務上限問題に対する市場の懸念は今後和らぐと見込まれる。

なぜ株式市場で「岸田ショック」が起きたのか

以上まとめると、アメリカ株市場を揺るがしている複数の悪材料がすべて解消される可能性は低いが、いくつかは年末までに和らぐと予想される。このため、9月中旬以降の株式市場の調整は長期化しないと引き続き予想している。

一方、日本株市場に目を転じると、岸田文雄政権発足を挟んで日経平均株価が8日連続で下落して、メディアでは「岸田ショック」などと報じられた。その後、注目されやすい金融所得課税について、岸田首相が「当面触らない」と発言する中で日経平均株価は3日連続で上昇するなど、岸田政権の政策への思惑で株式相場は上下している。

岸田首相らは、金融所得課税に手をつける時期として2022年の参議院選挙後を見据えていたと思われる。金融所得課税に言及しただけで、これが早期に実現するかのようにメディアで報じられたのが実情ではないかと筆者は考えている。このため「当面触らない」という発言は、必ずしも軌道修正とは言えないだろう。