コロナ禍の中、実体経済がダメージを受ける一方、株価は上昇した。株式投資に興味が湧いてきた人もいるだろうが、はたして、いまは「買いどき」なのだろうか?『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』を上梓した小宮一慶氏は、コロナ後の日本経済や企業業績について考えるうえで、「物価指数」にも注目する。

物価はこれから上がる? 下がる?

物価指標を見ると、今後、業績の回復が見込まれる企業とそうでない企業に分かれることが予想されます。「消費者物価指数(生鮮食品除く総合)前年比」は、総務省が調査して発表している指標で、私たちが買うものの物価を表しています。最初の緊急事態宣言が出た2020年4月以降を見ると、ゼロ、あるいはマイナスの数値が続いています。つまり、物価が下がるデフレが継続しているということです。

一方、日銀が調査・発表している「輸入物価指数 前年比」を見ると、2020年4月以降、2桁のマイナスが並んでいますが、徐々にマイナス幅が縮小し、2021年4月はプラス15.4%と、2桁のプラスになっています。その後は30%近い上昇が続いています。なぜでしょうか。

それは、世界的に新型コロナのワクチン接種が進み、経済が回り始めたからです。アメリカでは「ウッド・ショック」が起こりました。住宅を建てる人が急激に増えたため、木材の価格が高騰したのです。この影響で、日本の木材価格も上がりました。

次に、日銀が調査・発表している「国内企業物価指数 前年比」を見ると、2021年3月にプラスに転じ、その後、プラス幅が大きくなっています。国内企業物価指数は、かつて卸売物価指数と呼ばれていたように、企業の仕入れ価格を表しています。つまり、消費者物価は下がり続け、一方、輸入物価は上昇、企業の仕入れ価格も上がり始めているということです。

これによって、どのようなことが起きているのでしょうか。

たとえば吉野家は、牛丼の牛肉をアメリカから輸入しています。その輸入価格が上昇しているにもかかわらず、日本では消費者物価が上昇しないほど景気が弱く、牛肉の価格上昇分を牛丼の価格に反映させる、つまり値上げすることができないと言えます。

吉野家の牛丼のような日々の食べ物や日用雑貨は、競争相手も多く、日本の景気が弱いため、なかなか値上げすることができないのです。そのために業績が悪化している企業が多々あります。ただ、松屋は原材料の値上げに耐えられず、10月に大幅値上げをしました。