シート・ギークというチケット販売サイトによれば、インディアン・ウェルズ大会のチケットの平均価格は288ドルで、日陰のコートサイド席になると600ドル以上もざらだ。

大リーグのロサンゼルス・エンゼルスの試合では一番安い席が3ドルで買えるが、プロテニスの試合では一番安い席でも20〜50ドル以下の席はほとんどない。会場内の売店で水を買えば6ドルはする。

例年は4億ドルの経済効果がある大会

「砂漠の中のテニスパラダイス」と銘打つこの大会はある意味、富裕層の社交場とも言え、会場内の野外バーではビールやシャンパンを飲みながら、生バンドの演奏を聴いている客も多い。

大のテニスファンのアレクシス・モルドバンさん(左)と姉のアグネスさん。複数の選手からサインをゲット(写真:筆者撮影)

オラクル会長で億万長者のラリー・エリソン氏が同大会のオーナーで、IT長者の彼は施設に惜しげもなく資金を投入し、高級レストランのスパーゴやNOBUも会場内に設置されている。

例年40万人以上の客が来場し、地元のホテルも軒並み満員になるこの大会は、地元にとって約4億ドルの経済効果があると言われているが、今年はその半分の経済効果があればいいほうだろう。

例年ならば大挙してやってくる海外の報道陣も今年は少なく、メディア・ルーム内もやや閑散としていた。手をかざすと自動的に除菌ジェルが出る機械がいくつも設置されているメディア・ルーム内では、マスクは「オプション」とされ、毎日必ずマスクをしている人は少数だった。

筆者の隣の席のカメラマンがマスクをせずに大きなくしゃみをすると、周りのカメラマンたちから「1年前だったらこの場から叩き出されてるか、逮捕されてるかもよ」とジョークが飛んだが、誰もピリピリすることはなく、和やかな雰囲気だった。

全員がワクチン接種済みという前提があると、誰かが隣でくしゃみをして飛沫を浴びてもここまで平気になれるのかと自分でも驚いた。もちろん全員がワクチン接種をしているからと言って互いに感染しないという保証はまったくないのだが。

ノバク・ジョコビッチ選手など大スター選手の多くが欠場した今回の大会の男子決勝は、イギリスのキャメロン・ノーリー選手がジョージアのニコラス・バシラシビリ選手を破って優勝し120万ドル(1億3000万円)の賞金を獲得した。どちらも知名度がそれほど高くない選手だが、最後まで会場に残っていた熱心なテニスファンたちはふたりにサインをもらうためにコート際に並んで待っていた。

著者:長野 美穂