ところが、だ。銀行本体、証券子会社という2つのチャネルともに、赤字体質を抜け出せず、また法人向け融資などほかの業務に比べると、顧客満足度が相対的に低いという問題意識を抱かざるをえない状況があった。

これは、多くの地域銀行が直面している実情と言える。主要業務の1つになったとはいうものの、預金、貸出などに比べるとその歴史は浅く、ノウハウが蓄積されているわけではない。しかも、証券ビジネスに独特のシステム、事務処理が必要であり、したがって、損益分岐点は高い。

そこで、山陰合同銀行がそうだったように、自前のシステムは持たずに外部委託するケースも少なくないが、それでも、費やさざるをえないコストは相当に重たい。ましてや、証券分野では顧客本位の業務運営を徹底するにつれて、コンプライアンスコストは増し続け、また、関連制度が変更になるたびにシステムの改良コストが発生する。コスト高という構造問題は解消どころか、深刻化する一方と言っていい。

それだけではない。主力商品である投信の販売手数料は低下傾向にあるうえに、顧客が保有期間に応じて得られるストック収益である信託報酬(あるいは、代行報酬ともいう)にも引き下げバイアスが強まってきている。つまり、取引あたりの収益率は低下する一方で、そのための業務運営コストは増していくという構図だ。従来のモデルである限り、事業継続は容易ではない。

そうしたなかで、地銀に限らず、投信などの販売を行っている企業で叫ばれているのが「販売力の強化」である。合理的な戦略のようにも聞こえるのだが、実態はそうではない。多くの場合、この路線の下で営業現場では大いなる矛盾、歪み、疲弊が生じている。

強引な売り込みや「懇願セールス」を助長

顧客ニーズを棚上げして、手数料率の高い商品を優先する強引な売り込み、商品説明をわきに置いた「懇願セールス」などを助長したり、あるいは「ハイリスク・ローリターン」であり、手数料が不透明と指摘され続けている仕組債を販売したりという状況である。

仕組債の販売について、金融庁は「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング(令和2年度)」(2021年6月公表)のなかで「地域銀行で増加傾向、残高は高止まり」と指摘している。ここからは、不明朗な商品が地域銀行に定着しかけている実態が垣間見られる。

そのようなハイリスク商品の販売を主業としていると明確に打ち出していても、眉を顰めたくなる話である。ましてや、地域の信頼を基盤に置く地域銀行であれば、目先の利益のためにかけがえのない企業価値を棄損しかねない。

赤字体質のままでいいのか。それではビジネスとしての持続可能性は期待できない。山崎氏は悩み続けていた。そして、その難題の解として見出したのは自らが金融商品仲介業に転身するというウルトラCだった。