新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」。南アフリカからWHO(世界保健機関)に初めて報告されたのが11月24日。その2日後にはWHOがVOC(懸念すべき変異株)に指定し、世界各国で急速に警戒が高まるなかで、日本政府は11月30日から全世界を対象に外国人の入国を禁止している。それでもすでに国内では2例の感染が確認された。

感染力がこれまでより強いとも、既存のワクチンが効かないとも情報が飛び交うが、はたしてオミクロン株はどこまで恐ろしいものなのか。

菅前政権から感染症対策担当の内閣官房参与を務め、岸田内閣が発足してもそのままの任にある岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長に話を聞いた。岡部氏は政府の分科会メンバーであり、厚生労働省の新型コロナウイルス対策アドバイザリー・ボード(専門家会議)のメンバーでもある。

ウイルスの変異は当たり前にある

――オミクロン株とはどういうものと解釈すればいいのでしょうか。

ウイルスの変異は当たり前にある。そこではどこの部位でどういう変化があるのかが問題になる。今回の場合は感染や病態に関連のあるウイルス表面のスパイクタンパク質の構造を決定する遺伝子(設計図)に多数の変異が見られているということで注意を引いている。

おかべ・のぶひこ/1971年東京慈恵会医科大学卒業。1978〜1980年アメリカ・テネシー州バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員。1991年世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染性疾患予防対策課課長、1995年慈恵医大小児科助教授(現在同客員教授)、1997年国立感染症研究所感染症情報センター・室長、2000年同センター長、2013年から川崎市健康安全研究所所長(写真:尾形文繁)

少し前までは、病気の症状が先行して、急に広がったとか、重症化しやすいとか、感染しやすいということで調べてみると、ウイルス遺伝子が変異していることがわかった。

それが今は先読みができる。見つかったウイルスを丁寧に調べてみると、感染などに関連する部分の遺伝子に変異があることがわかってきた。しかし、それはウイルスが変異しているのであって、それと人の病気との関連性は必ずしも一致していない。関連がある場合も、関連がない場合も、あるいは薄い場合もある。

以前は病気をみて、ウイルスをみたから、病気の変化がウイルスの変化によるものといえた。ところが、ウイルスの変化が病気の変化にあらわれるともいえない。ウイルスをみて人への影響はどうか、入り口は見えても先がまだ見えてこない。可能性はいろいろ考えられるが、実態がどうかは今の時点ではわかっていない。

実態を見るためには、動物実験や、患者・感染者の状況を知る疫学調査が必須だ。ウイルスの変化の結果としてどういうことが表れるのか、調べなければいけない。これには長い時間は必要としないが、一定の時間は必要で、おそらく2〜4週はかかるだろう。

とはいえ、手をこまねいてみているわけにはいかない。ある程度可能性があれば対策をとらないといけない。それは行政や医療関係者のプロの側のやることだ。