年末調整や確定申告など、税やお金に関することに一層気を引き締める時期が近づいています。税について知れば知るほど、世界情勢にも詳しくなり、そして過去からついてくる歴史を振り返ってみたくなるはずでしょう。「税」と「歴史」は切っても切り離せない関係があり、税を学ぶことは歴史を学ぶことでもあります。世界で起きているほとんどのことが「税」「お金」「権力」で繰り広げられています。古代ローマからの始まっている「税システム」のあり方から探ってみましょう。

元国税調査官である大村大次郎氏の新書『脱税の世界史』を一部抜粋・再構成し、お届けします。

「ロック」を巨大な市場に変えた

20世紀最大のミュージシャンであり、音楽をビッグビジネスに変えたビートルズ。

ビートルズは、人気絶頂でありながらわずか8年で解散してしまったわけですが、このビートルズの歴史にも税金が深くかかわっているのです。さらにいえば、ビートルズの解散は、税金が大きな理由の1つでもあるのです。

ビートルズは、ロックを巨大な市場にしたアーティストです。

ビートルズがアメリカに上陸した1964年からビートルズが解散する直前の1969年にかけて、アメリカのレコード市場は約3倍に膨れ上がっています。これはアメリカだけではなく、世界的にもいえることで、ビートルズの出現が、音楽市場を大きく拡大したといえるのです。

しかし、市場が拡大し、大きな金が動くようになると、ミュージシャンが初めて経験するような「金銭的な問題」が多発したのです。

しかも彼らは、自分たちで曲もつくっていたので、作詞作曲印税も生じていました。そのお金は、彼らの想像がつかない天文学的な数字になっていました。その巨額のお金に、翻弄されるようになるのです。

ビートルズはデビューするときに、契約内容をあまり深く検討していませんでした。当時は、「ロックで食べていける」ということなどは夢物語のように思われていたので、その後の収入の配分のことなどはあまり考えていなかったのです。

だから、ビートルズの収入は、その売り上げに比べればかなり低いものでした。彼らも後からそれに気づき、関係者と交渉して改善を試みましたがなかなからちが明きませんでした。彼らのこのときの苦労は、後のミュージシャンたちの教訓になりました。

彼らが直面した最大の問題は「税金」でした。契約内容が悪かったといっても、あれだけ売れたのですからビートルズには莫大な収入が入ってきました。もちろん、その収入に対して、巨額の税金が課せられました。