これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第100回。

爪に手書きでキャラクターを描く「痛ネイル」

結木帝歌(ゆうき・ていか)さんは、大阪で人気のネイリストだ。色とりどりの鮮やかなネイルや、食べ物や動物をあしらったネイルなどはもちろんのこと、人気ゲームや人気マンガのキャラクターを描く「痛ネイル」というジャンルを手がけており話題になっている。

「痛ネイル」とは爪1本1本に手描きでキャラクターを描く。とても緻密な作業だ。

1人に対して最低でも3〜4時間はかかる。両手の爪に1枚1枚違うキャラクターを8時間、ぶっ続けで描いたこともあるという。

結木さんは非常にバイタリティーにあふれ、長時間の作業でもずっと笑顔でおしゃべりを続けている。

結木さんが手がけたネイル

技術の高さはもちろんだが結木さんの「愚痴を聞いてくれるお姉さん」的な気質も人気の秘訣だ。

結木さんはどのような道を歩き、ネイリストにたどり着いたのか?

彼女が経営するネイルサロンの店内で話を聞いた。

結木さんは大阪の裕福な家庭に産まれた。いわゆるお嬢様だったが、本人はそうは思っていなかったという。

「なぜか実家は貧乏だと思いこんでいたんですよね。両親に『何々を買ってほしい』と頼むと『お父さんに聞いて』『お母さんに聞いて』って2人とも言うんですよ。それで子ども心に『うちにはお金がないんだな……』と思ってしまって。そのまま大人になるまで貧乏だと思い込んでました。今になって『あれ? めちゃくちゃ実家太い(金持ち)なあ』って思います」

結木さんのお母さんは非常に気が利く、よくできた人だったという。ご飯もおいしく、学校の送り迎えもしてくれた。

武道系の部活に入ってからは、きちんと体重管理もしてくれた。

「母親としてはパーフェクトだったと思います。ただお母さんのことはものすごく苦手だったんですよね。とにかく気が合わない。

ただこれは母の問題じゃなくて、私の問題だと思います。私は子どもの頃からずっと団体行動が苦手だったんですよ。先生とはトラブルが尽きないし、小中高と一度も修学旅行に行ってません。家族って最小単位の団体行動じゃないですか? だからうまくできなかったんだと思います」