「私鉄王国」というと、だいたいの人が関西を思い浮かべるのではないかと思う。確かに京阪神地域は阪急や阪神、京阪、南海、近鉄と私鉄の雄が勢揃い。首都圏にだって負けてはいない。

ほかに私鉄が“王国”を築いている地域はどこだろうか。福岡県も、西鉄が通勤通学輸送を担う大動脈として大活躍をしている。現実的には西鉄バスのインパクトのほうが強いが、広い意味では私鉄の勢力圏にある地域といっていい。三大都市の一角、名古屋を擁する愛知県もまた、名鉄という大手私鉄がネットワークを広げている。

新幹線で2時間ちょっと

そして、富山県である。福井・石川とともに北陸三県の1つで、東京とも北陸新幹線で結ばれている富山県。どちらかというと地味な県かもしれないが、なかなかどうして、大都市を持つわけでもないのに私鉄が大勢力を張っている珍しい地域なのである。

沿線は田園地帯だが、通勤通学輸送が大半の富山地鉄不二越・上滝線(撮影:鼠入昌史)

富山県の鉄道は、その私鉄、すなわち富山地方鉄道を抜きにしては語れない。新幹線で富山県を目指し、富山地鉄の旅をしながらこの世にも希有な県の鉄道事情を探ってみることにしよう。

東京から富山県に入るには、もはや新幹線一択である。飛行機という選択肢もないことはないが、新幹線「かがやき」で2時間ちょっとなのだから事実上新幹線の独壇場といっていい。

富山県内に新幹線の駅は3つある。東から、黒部宇奈月温泉駅・富山駅・新高岡駅だ。ふつうならば「かがやき」停車駅の県都の玄関口、富山駅にやってくるところだが、今回はあえて黒部宇奈月温泉駅から旅をはじめよう。なにしろ、この駅は新幹線と富山地鉄が接続している駅なのだから。