一方、中国との関係を理由の一つとする声もある。環日本海経済研究所(新潟市)の三村光弘主任研究員は、「中国の今後の防疫体制と連動させるためだ」と指摘する。「ゼロコロナ政策を進める中国が、現在でも上海など感染者が発生した一部地域をロックダウンしているが、経済への影響を考え2022年秋に開催予定の中国共産党大会をメドに、ウィズコロナ政策へ転換する動きがある。経済的に関係が深い中国がそろそろオープンするので、北朝鮮も国境を開放して経済を活性化させるためには、北朝鮮もウィズコロナ政策へ転換しなければならない。そのための地ならしとして今回発表した可能性がある」(三村氏)

実際に、北朝鮮の国営メディアはこれまで世界の新型コロナ感染者数を連日報道してきた。最近感染者数がやや高止まりしている韓国の状況も含めて報道しているが、感染者数の割には死亡者が少ない傾向にあるため、北朝鮮も「国内の現状を示しても国民は動揺しない」と判断したとも考えられる。

北朝鮮は2021年から住宅建設や都市の再開発などビッグプロジェクトを金正恩・朝鮮労働党総書記の肝いりで始めている。必要な資材を確保するには中朝国境を開放しなければならない。そのためにはコロナの感染状況をより正確に伝えて国民の心配を減らし、経済活動を正常化させようという狙いも垣間見える。

その上で前出のランコフ教授は、北朝鮮が今後とりうる戦略に3つの選択肢があると見ている。①感染拡大に目を閉じて集団免疫ができるまで待つ戦略、②海外に多くのワクチンを要求する戦略。③中国のロックダウンのような強力な封鎖政策の3つだという。

①は、「確かに集団免疫は一種の科学的な方法だが、北朝鮮にとっては難しい」とランコフ教授は指摘する。「コロナ禍が始まって以降、前述のように国営メディアでコロナの危険性や致死率について強く報道してきた。その分、国民の新型コロナウイルスに対する恐怖心も相当あるだろう。そのような中で何の措置もしないということはありえず、そうであれば国民からの不満も強く生じるはずだ」(ランコフ教授)。

ワクチンを受け入れるインフラがない

今後、可能性が高いと思われるのは②だ。人口約2400万の北朝鮮にとって、必要なワクチン本数は数千万〜1億本となるだろう。国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)主導のワクチン共同購入・供給の枠組みであるCOVAXが2022年4月12日、北朝鮮に182万8800回分を割り当てている。