ニッチな商品やサービスでもない限り、どれほど強い企業でも1社で大きな市場を独占できるケースはほとんどありません。多くの場合、どんな企業にも宿敵やしのぎを削るライバルがいます。さまざまな業界の垣根も取り払われていく中で、かつてなかった競合関係も生まれています。そんな「ガチンコ好敵手」の勝負の分かれ目を、企業分析のプロである立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏が追う連載。今回からスタートします。

イオンですら「ネットスーパーの黒字化」は難しい

新型コロナ禍でEC市場の成長が加速しましたが、食品小売りも例外ではありません。これまで、ウォルマートなどの成功事例がある海外に比べて国内スーパーのデジタル化は立ち遅れていましたが、ここへきてイオンをはじめ大手各社が「ネットスーパー」事業の拡大に本腰を入れようとしています。

消費者にとっては「リアル店舗か、ネットスーパーか」と買い物の選択肢が増えるのは喜ばしいことであるはず。しかし、事業者から見ると、この戦いの先行きは不透明です。というのも、ネットスーパー事業を黒字化できるのか、ネットスーパーという業態は持続可能なのか、まだ定かではないのです。

小売りのなかでもスーパーマーケットという業態は営業利益率が低水準であることで知られています。人的コストを下げるためにセルフサービス方式をとり、利ざやを稼ぐのが従来のスーパーのあり方でした。それがネットスーパーになっても売る商品は同じ、しかし商品のピッキングや配送などさまざまな追加コストが事業者にのしかかります。

そのため、セルフサービス前提の価格設定のままでは、ネットスーパー単独での黒字はきわめて困難となります。事実、大半の企業においてネットスーパー事業はまだ赤字なのです。世界最強の小売企業アマゾンでさえ、EC事業単独でみれば従来からアメリカ以外の海外部門は赤字であり、クラウドサービスなどの利益で穴埋めしている状況だと言えば、ネットスーパー事業の難しさが伝わるでしょうか。

ところが、驚くべきことに今から15年も前にネットスーパーの黒字化に成功している企業があります。三重県のローカルスーパーであるスーパーサンシです。店舗数は13と規模の点では大手とは比べるべくもありません。また楽天やアマゾンのようなネット専業でもありません。