開始から5カ月目に入ったウクライナ侵攻。フィンランドなど北欧2カ国の北大西洋条約機構(NATO)加盟が決まり、ロシアの安保環境は一層厳しくなった。しかしこれをよそに、プーチン大統領は「次のクレムリンの主」の座を狙う政権最高幹部らに競争をさせながら、内政面での自らの求心力を高めるのに成功している。

健康不安説も流れているプーチン氏からの「後継指名」を狙ってライバルたちはプーチン流の強硬なタカ派発言を声高に繰り返し、トップの歓心を買おうと必死だ。このままでは、仮にプーチン氏が近い将来退陣しても、次に登場するのは治安機関に支えられた反西側的「プーチン亜流政権」となる恐れが強まっている。

失敗した幹部を解任せず

さらに、こうしたプーチン政権の安泰ぶりの背景にあるのは、どんな失敗があっても政権最高幹部たちを解任せず、さらにその子どもたちにも政治的地位と富を分け与えるという、プーチン流の家族丸ごとの政権幹部囲い込み戦略がある。クーデターの動きを封じ込めるためにクレムリンの権力構造を世襲化しようというプーチン氏の動きに対し、反政権派グループは「王朝化だ」と強く批判している。

これまで水面下で進んでいた跡目争いを一気に表面化させたのは、前大統領であるメドベージェフ安全保障会議副議長の2022年6月初めの発言だ。メッセージアプリ「テレグラム」での自らのチャンネルで、ロシアに制裁を加えた欧州連合(EU)に対し「大バカ者」と呼んだうえで「世界経済で革命という大火事が起こるだろう」と予告したのだ。この発言には西側から批判が出たが、同氏の過激発言はさらにヒートアップ。「彼らはわれわれロシアの死を望んでいる。彼らを私は憎んでいる。彼らはろくでなしで、変態だ」と、口汚い言葉を並べた。

こうしたメドベージェフ氏の過激な言動について、メディアからは「プーチン以上にプーチン」との驚きの声が起きた。プーチン氏と言えば、米欧への強い攻撃的言辞と、政敵への罵り言葉が代名詞だったからだ。大統領就任直後から「テロリストは必ず見つけ出し、便所の中で血まみれにしてぶっ殺す」などギャングのスラングを公然と口にしてきた。今回のメドベージェフ氏の一連の発言は、明らかに自分こそプーチン流政治(プーチニズム)の後継者と名乗りを上げることが狙いだ。