2月24日から始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、アメリカ軍は今後の軍事行動においても、砲撃に加えて、サイバー戦、電子戦、情報戦を組み合わせたハイブリッド戦が仕掛けられてくることを想定し、総合対応力強化のために演習や組織編成を進めている。本稿では、そうした取り組みを概観したうえで、日本が得られる教訓について分析する。

4月のアメリカ陸軍の演習

まずアメリカ陸軍が4月に行ったのは、都市への爆撃に加えて、ソーシャルメディアによる偽情報の拡散やジャミングなどの電子戦を展開する軍隊を想定した2週間に及ぶ演習である。4月16日付のAP通信が報じた。

テキサス州に拠点を置く第1騎兵師団第2旅団の兵士約4500人がアメリカ軍役、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠にある国家訓練センターの第11装甲騎兵連隊の兵士1350人がロシア語を話す敵軍役を担当し、同センターに設けられた模擬都市で演習を実施した。

模擬都市を占拠している敵軍役は、ロケット砲やミサイルでの都市の破壊を厭わず、しかも「アメリカ軍が攻撃を準備中」など、事実に基づかない非難をソーシャルメディアで拡散するという想定だ。携帯電話で撮った画像も素早くソーシャルメディアに投稿する。

一方、アメリカ軍役は、死傷者が増え、側面から猛攻を受け、補給が滞っている中で、敵のプロパガンダが自分たちをどのように描いているかにまで注意を払う余裕がなかなかない。砲撃、航空などの担当がバラバラに自分の担当に専念していたのでは、さまざまな要素を組み合わせてハイブリッド戦を仕掛けてくる敵軍役に苦戦を強いられるばかりとなってしまう。

そのため、この演習の目標は、情報戦担当を含め、あらゆる担当が連携し、情報共有しながら防御・攻撃できるようにすることであった。

さらに、陸軍州兵が主催し、空軍州兵が補佐、ネットワーク防御やサイバー攻撃被害への対応などの能力を高めるために2013年から行われている「サイバー・シールド」演習でも、ウクライナ情勢を踏まえたと見られるシナリオが今年盛り込まれた。これは、非機密指定のアメリカ国防総省系年次サイバー防衛演習としては最大規模のものである。

ペンシルバニアなど40州のアメリカ州兵のうち、4000人がサイバーセキュリティに携わっており、その多くは主要ハイテク企業で普段働いている。サイバー攻撃の被害が増えるにつれ、州兵は、治安維持や災害派遣だけでなく、サイバー攻撃への対応も担うようになってきた。