全世界で5586台。これは、ロールス・ロイス・モーター・カーズ(以下ロールス・ロイス)の2021年「年間販売台数」である。コロナ禍前の数値を大きく超えた、歴代最高の台数だ。

日本における販売も上向きで、コロナ禍の落ち込みを取り戻しており、前年比で49%増を記録している。

6000台に満たない台数は一般量産車なら月間販売台数のレベルだが、ランボルギーニの2021年実績が8405台、あのラグジュアリーマーケット最強のフェラーリでも1万1155台だから、なかなかの数なのだ。

それに、やはりロールス・ロイスは高価だ。もっともお手頃な「ゴースト」でも、その価格は3787万円から。そう、この価格はあくまでも”から”なのである。

それなりのオプションを加えていけば、プラス1000万円くらいは覚悟する必要がある。さらに、後述するような特別のバリエーションも控えているから、ロールス・ロイスの“商品単価”はかなり高額だ。

超高級車を“使い倒す“新富裕層

ロールス・ロイスの客層とフェラーリのそれはかなり異なる。フェラーリは“走る金融資産”のような側面を持っており、販売価格/販売数量/市場のニーズのバランスが極めて緻密に計算されている。

だから、無理をしてでもフェラーリを買った顧客には、それなりのリセールバリュー(再販価値)という保険がついてくる。フェラーリを買って、損をすることはないのだ。しかし、ロールス・ロイスは少し違う。12気筒フロントエンジンのフラッグシップ・フェラーリに近いだろう。

ロールス・ロイスのような4ドアセダンや2ドアビッグクーペは、元値が高い一方でリセールバリューは低い。だから、経済的にも余裕のある高年齢層がメインターゲットであった。ところが、近年この傾向が変わりつつある。

SUVの「カリナン」を含む、カジュアルな仕様のロールス・ロイス車ラインナップ(写真:ROLLS-ROYCE MOTOR CARS)

ロールス・ロイスの顧客層は若返りが際立っており、フェラーリ・オーナーにみられる禁欲的なクルマとの付き合いを好まない層が、オーナーに加わり出した。

彼ら新富裕層は、リセールバリューを保つために「走行距離2万キロを超えたくない」とか「奇をてらった内外装は避ける」といったことしない。リセールバリュー低下をいとわずに、ロールス・ロイスを車として“使い倒す”のだ。