老後のために積み立てた年金を、本人も気づかぬまま「放置」してしまっているケースが増加している。転職や退職の際に企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入資格を失い、必要な手続きをとらないまま毎月手数料を徴収されている人が約110万人もいるのだ。

こうした「放置年金」は国民年金基金連合会が管理しているが、移換費用や手数料が差し引かれるうえ、運用機会も失われることになる。転退職者の増加など雇用が流動化する時代、あなたは老後生活を支える大切な年金で損をしていませんか。

転職の忙しさで年金手続きを忘れる

「あなたの確定拠出年金は今、どうなっているの?」

8月下旬、大手商社を今春に退職した40代女性Aさんは同僚だった友人の一言にハッとした。確定拠出年金制度は2001年にスタートし、Aさんが勤めていた会社でも10年以上前に企業型DCが導入された。会社が運営し、掛金や手数料も負担してくれる制度に「すごい得な年金だね」と同僚たちと喜んだことは覚えている。だが、その後は特に話題に上ることがなく「資産」の行方にも無関心だった。

転職先の会社は企業型DCを導入していない。自らの病気やケガ、そして子供のために医療保険や学資保険に入るAさんだが、退職前の会社で積み立てていた年金のことは失念していた。

「退職時に説明は受けたとは思いますが、転職先の準備や挨拶回りで忙しく、そもそも自分が加入していたことすら忘れていました。自分で掛金を払っていない分、自覚が薄かったんです」

Aさんは慌てて金融機関で個人型確定拠出年金(iDeCo)の口座を開設し、それまでの「資産」を移換する手続きをしたという。

転職・退職者が増加する今、企業で積み立てた確定拠出年金が放置されるケースが後を絶たない。「放置年金」と呼ばれる年金資産は5年間で7割も増加し、2500億円近くに上る。背景にあるのは、運用状況への関心の低さと制度の難しさだ。