「株価至上主義が、すべてをおかしくしている」

9月初旬に日本電産社長を辞任した関潤氏は、在職中、周囲にそう語っていたという。

日本電産創業者の永守重信氏(現会長)が自社の株価を非常に気にする経営者であることは、自他共に認めているところだ。株式投資は16歳で始めたといい、著書『永守流 経営とお金の原則』には、〈私ほど自社の株価や時価総額について語る企業経営者はいないかもしれない。つねに自社の株価の動きに目配りし、1日に10回くらいはチェックする〉と記している。

幹部会議や役員宛のメールでは、「株価は社長の通信簿」「時価総額ランキングこそが企業価値を決める最も重要な指標」と繰り返し、時価総額ランキングで昨年は国内8位まで上がったのに今年は25位に転落したと落胆してみせた。同じ京都の村田製作所など永守氏がライバルと見なす企業の株価と自社の株を比較して一喜一憂する。それがカリスマ経営者・永守氏の実像だ。

永守氏の「株価至上主義」を象徴するこんな出来事が、今年4月下旬にあった。車載事業本部の関係者が話す。

「目標『過達』できない役員には罵倒、降格、降級」

「会長からの突然の指示で、『株価から逆算した業績目標』なるものが降りてきたのです。株価1万円台を回復するために、年度当初に設定した業績目標をさらに上回る利益を出すことが求められ、それを当初目標の『過達』と呼んで、第1四半期は110%過達、第2四半期は117%過達せよと指示されました。そもそも年度当初の目標からして実現が危ういほど高いのに、それをさらに1割、2割『過達』せよというのですから、できるわけもありませんが、何せ永守イズムの真髄は『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』です。『今の日本電産には何があっても過達するという気概と執念がない』『未達は悪、赤字は犯罪』との猛烈なハッパに役員らはあらがいようもなく、過達できない役員には幹部会議で罵倒、降格、減給が待っているのです」

永守氏の株価への執着がもたらす危うさは、辞任した関氏も在職中にたびたび指摘していたという。「日本電産に疑惑、自社株買いに永守会長が関与か」で指摘したインサイダー取引の疑惑を懸念しただけではない。株価至上主義が異常に高い業績目標を招き、そのために尋常ならざるプレッシャーがかけられる結果、社内に著しい歪みをもたらすからだ。