2022年11月、トヨタ自動車、NTTほか国内8社が出資する、先端半導体の国産化に向けた新会社の設立が明らかになった。日本政府は、700億円の助成で次世代半導体事業を後押しする。こうした産業支援のプロジェクトもあれば、現在進行形で続いている新型コロナウイルス感染症対策、地球温暖化といったグローバルな課題への対応も欠かせない。こういった公共政策を経済学の視点で分析し、政府の果たすべき役割を考察するのが「公共経済学」である。

市場と政府のバランスを重視し、クリントン政権下で「政府の効率化」に取り組んだ経験も持つコロンビア大学のジョセフ・E・スティグリッツ教授は今、公共経済学をどう語るだろうか。『スティグリッツ公共経済学(第3版)上』の日本語版序文を一部再編集してお届けする。

公共部門の重要な役割

私は、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを務めたことによって、公共部門が世界の国々でそれぞれ異なっていることを知ることができた。公共部門の大きな国もあれば、小さな国もある。公共部門が非効率で汚職がはびこっている国もあれば、非常に効率的でありかつ公正な国もある。

経済の発展と成長に成功してきた国や、高度な社会的安定と結束力を維持している国のほとんどすべてにおいては、公共部門は重要な役割を果たしてきた。

私は、さまざまな理由で市場が効率的な結果をもたらさないという市場の失敗や、政府介入が事態をどのように改善するか、ということに注目してきた。しかし政府もまた非効率である場合が多い。日本の政府はあまりにも官僚的であるとよく非難される。私は、ホワイトハウスで大統領経済諮問委員会(CEA)の委員・委員長を務めていた数年間、政府をより効率的にし、かつ官僚的でなくする方法(その政策は「政府の再創造」と呼ばれている)に大いに集中し努力した。