小麦はロシアがウクライナに侵攻する以前から、昨年の干ばつで日本が依存する北米産が不作になったことから値上がりし、これが今年4月の政府の売り渡し価格の引き上げにつながった。そこにウクライナ侵攻が加わって、両国からの輸出が滞り、国際価格はさらに上昇。サプライチェーンの混乱やエネルギー価格の高騰もあって、世界中にインフレの波が押し寄せ、日本国内でも食料品の値上がりが相次ぐ。

そうしたところに、今年も干ばつによる小麦の不作が伝えられる。小麦の自給率15%(2020年度)の日本への影響も避けられない。国内でも穀物の自給率向上へと政策が迫られているが、世界に目を向けると、こうした食料危機に対処するため、遺伝子組み換え(Genetically Modified、以下GM)作物が存在意義を示している。これまで認められてこなかった小麦のGM種の作付けも、世界4位の生産量を誇るアルゼンチンで始まっている。

生産性の効率を求めるのであれば、日本でもGM作物の生産が検討されてもいいはずだが、そうはならない。そこに生じる世界とのギャップが膨らんでいくばかりだ。

日本でも試験栽培は行われている

茨城県河内町。都内からでも車で1時間ほどのこの場所で、GM作物が栽培されている。と、いっても、周囲はフェンスで囲まれ、関係者以外の立入を禁じ、大手警備会社の契約マークが貼られている。

私がかつてこの厳重に隔離された場所を訪れたときには、「モンサント」の日本法人が管理していた。そのモンサントもいまではドイツの医薬・農薬大手「バイエル」に買収されて、「バイエル クロップサイエンス」が引き継ぐ試験圃場だ。

モンサントといえば、アメリカのGM種の開発大手として知られた。その代表的なものが、同社が開発した除草剤「ラウンドアップ」(グリホサート剤)を被っても枯れない除草剤耐久性の大豆やトウモロコシだ。除草剤は雑草だけにかけないと農作物も枯れてしまう。ところが、このGM種を使えば、ラウンドアップを畑に一斉散布しても、雑草だけが枯れることで農作業の手間が省ける。その大豆がこの圃場で栽培されている。