5月29日発売の『週刊東洋経済』では「四季報記者が教える決算書の読み解き方」を特集。財務3表の構造を基礎から解説するほか、多種多様な企業の決算書を読み込んでいる四季報記者の分析のツボも紹介している。決算書から「会社の実力」を見極めるスキルは、投資にもビジネスにも欠かせない。今が学び直しのチャンスだ。(この記事は本特集内にも掲載しています)

決算書を読み解く際には「比較」を行うことが重要だ。比較する際には、主に単年度の決算書を「同業他社比較」する視点と、決算書を「時系列比較」する視点があるが、後者の視点ではとくに、その会社がビジネスモデルをどう変革してきたのかを読み取ることができる。

時系列比較の実例を見てみよう。下のグラフは日立製作所(以下、日立)の無形固定資産と有利子負債(借入金と社債等の合計)の推移だ。2009年3月期を境に、日立の無形固定資産は徐々に増加し、2021年3月期にはさらに大きく膨張している。また有利子負債については、2017年3月期に一度大きく減少した後、無形固定資産の増加に合わせるように2021年3月期にかけて大きく増加した。

企業の「大再編」が財務データに表れる

2009年3月期に過去最大の最終赤字(7873億円)を計上した後、日立はグループ事業再編を進めてきた。下表からは、日立が非中核事業を切り離してきた一方で、中核事業を担うグループ会社の完全子会社化や、積極的な事業買収を行ってきたことがわかる。このグループ事業再編の取り組みが、先の時系列比較のデータに如実に表れているのだ。