2009年から2017年までアメリカのファーストレディを務めたミシェル・オバマ氏。キャリアに恵まれ、充実しているように見える彼女ですが、物心ついたころから「周りとちがう」「浮いている」と感じ、子育てや友人作りの壁にぶつかり、不安に襲われてきたと言います。その彼女が、どうやって不安を克服してきたかを語ります。
※本稿はオバマ氏の新著『心に、光を。 不確実な時代を生き抜く』から一部抜粋・再構成したものです。
うまく着地できるときもあれば、失敗することもある
子ども時代、モンスター映画を観ていないときのクレイグ(兄)とわたしは、ときどきテレビでイーヴェル・ニーヴェルというバイクの有名スタントマンを見た。おそらく、だれよりも興味をそそるアメリカのヒーローだ。
星条旗模様で飾られた白い革のジャンプスーツを身につけ、どことなくエルヴィス・プレスリーをまねていて、バイクに乗って危険な離れわざを披露する。とまった車や長距離バスの列の上をジャンプしようとしたり、アイダホ州の峡谷を跳びこえようとしたり。めちゃくちゃだけど、心を奪われた。
うまく着地できることもあれば、失敗することもある。たくさん骨折し、たくさん脳震とうを起こして、ときどき自分のバイクにひかれたけれど、なんとかいつもよたよたと歩き去った。いまのは奇跡? それとも大惨事? 当時はみんな、そんなことはどうでもよさそうだった。ただただ見つづけた。その男と大きく重たいハーレーダビッドソンが、発進して飛ぼうとするのを。
バラクの大統領選出馬にイエスと答えたあとの2007年、わたしは少しこんな気持ちになった――重力の法則も常識の力も無視して、突然バイクで空中に放りだされたような気持ちに。