ロシアによるウクライナへの侵攻から2年。現地を拠点に活動する写真家によるレポートです。

2月17日、現地時間2時3分。ウクライナ軍参謀本部のフェイスブックページに「ВАЖЛИВО(重要)」の大きな文字とともに声明文が投稿された。

発信者はウクライナ軍のシルスキー総司令官。「アウディーイウカ周辺の作戦状況に基づき、私はわが部隊を撤退させ、より有利な地点での防衛に移ることを決定した」、と書いてあった。

空襲警報が響く長い夜

その夜、アウディーイウカから64キロメートル北にあるドネツク州のクラマトルスクと、筆者の自宅があるスラビャンスクに砲撃が相次いだ。最初の一発は19時半ごろ。筆者は子犬の散歩中で、爆発音に驚いた近所の犬とともにアパートへ駆け込んだ。

アウディーイウカが陥落する直前、ウクライナ軍の拠点となったコークス工場で撮影された写真(写真提供:ウクライナ兵、ブイコ氏)

その後1時間にわたって10発弱の着弾音が聞こえた。「アウディーイウカが陥落したら、この街にも影響が及ぶ」。そう聞かされていた住民たちは、窓から光が漏れないようカーテンを閉め、空襲警報が響く長い夜を過ごしている。

【地図:狭まるアウディーイウカの包囲網】

左上より2月1日、右上が2月14日、左下が2月17日(10:03)、右下が2月17日(14:32) (地図:DeepStateMapより)