企業のリモートワーク環境が整備され、従来のオフィスに加えサテライトオフィスや自宅、カフェなど、ワークプレイスが拡大している。この働く自由度の高まりと裏腹に被害の増加が懸念されるのが、「盗み見」でパスワード等の情報を窃取するという古典的な手法だ。その対策について、神戸大学大学院の森井昌克教授に話を聞いた。

狙った企業や個人の情報を探し出す「ゴミ箱漁り」も

――サイバーセキュリティに関連して、「ソーシャルエンジニアリング」という言葉をよく耳にします。これはどのようなものですか。

一般的な言い方をすれば、あまり高度な技術を使わずにパスワード等の情報を盗み取るハッキング手法です。

ハッキングというと高度なIT技術を駆使して他人のコンピューターやネットワークに侵入し、情報を盗んだり破壊活動を行ったりするイメージがありますが、ソーシャルエンジニアリングはそれとは異なり、セキュリティの専門家は「泥臭い手法」と言っています。

代表的な手法なものは、狙った企業や個人のゴミ箱を漁って情報を探し出す「ゴミ箱漁り」。これは捨てられたゴミの中に、メモに書かれたパスワードやそれに近い情報はないかと探す手口です。

あるいは郵便物を盗んだり、なりすましがニセ電話をかけて聞き出したりする方法もあります。重要な情報を入力している画面やキータッチを覗き見て情報を盗む「ショルダーハック(ショルダーハッキング)」もソーシャルエンジニアリングの1つです。