韓国の総選挙は、結局、保守系与党「国民の力」が敗れた。改選前でさえ国会(定員300)で114議席と、過半数を占めていなかった少数与党状態が、今回108議席とさらに議席を減らしたのだ(114→108)。

実は、選挙戦終盤にメディアで大きく報じられたイシューの一つは、進歩系最大野党「共に民主党」の候補による放言であった。過去に「梨花女子大学の初代総長が学生たちをアメリカ軍将校たちに『性上納』していた」と根拠も示さぬまま述べていたことが露呈したのだ。

直前の敵失が追い風にならなかった与党の惨敗

これには他党や梨花女子大の卒業生たち、それに多くの女性団体が一斉に反発して立候補辞退を迫る騒ぎとなった。くだんの候補は平身低頭で発言を謝罪・撤回したものの、立候補は取り下げず、「共に民主党」の李在明代表もほぼ知らんふり。そうした開き直りのような態度に世論はさらに硬化。土壇場での敵失で与党に思わぬ追い風か、とも目された。

しかし、投票箱のフタが空けられると、そうした失言は尹錫悦大統領の不人気を帳消しにするにはまったく至らなかった。「共に民主党」や曺国元法相の新党「祖国革新党」が大きく議席を伸ばす結果となった。「性上納」発言議員も、僅差ながら小選挙区で当選した。

つまりは、どうあっても尹政権に対する「ダメ出し」は避けられない情勢であったわけだ。尹大統領の国政運営に対する逆風はさらに強まっている。

ただ、俯瞰してみれば尹政権に大きな失政はなかった。むしろ、文在寅前政権が「やろうとしたけど、できなかった」課題解決を、尹政権は矢継ぎ早にやってのけてきたと評価することが可能だ。