そして、ヒトの働きを効率よく稼ぎに換えると、組織論やモチベーションの問題が雲散霧消することも珍しくありません。

欲しいのはイノベーション?

 戦略論は、リーディングエッジに引きずられがちです。

本書執筆時の2023年で言えば、さしずめ猫も杓子もイノベーション、プラットフォーム、サブスクリプションといったところでしょうか。

こうした情景は、「いったん金槌を手にすると、目に飛び込んでくるものは何でも釘に見えてしまい、思わず打ち付けたくなる」という笑い話を彷彿とさせます。

たとえばイノベーションは、再現性に乏しいうえ、売上高を一時的に引き上げて終わりです。他社による模倣が相次ぐなかで成長を長らえ、利益を確保するには、何か他の手段がいります。

端的に言うなら、それが戦略です。この本は、リーディングエッジとは何の縁もない凡庸な事業や企業に役立つオーソドックスな戦略論を展開していきます。

倣うべきはグローバルスタンダード?

 ベルリンの壁が1989年秋に崩壊して以来、世界経済の一体化が大きく進展しました。そこから、何でもグローバルスタンダードに倣えという掛け声が飛び交うようになっています。

マネジメントのプラクティスも、経営の戦略も、例外ではありません。

スタンダードを主導するのは、アメリカ、EU、そして中国です。ほかはいざ知らず、経営戦略で彼らに追随すると、日本のような小国には自殺行為となってしまいます。