今回の行政処分で浮き彫りとなったのは、広告の一大ジャンルである検索連動型広告の危うい市場構造だ。

電通グループの「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によれば、2023年の日本におけるインターネット広告費は3兆3330億円と過去最高を更新。その中でも検索連動型広告は1兆0729億円と、動画広告などをしのぐ最大のジャンルだ。

ただ、その配信事業者はグーグルとヤフーのほぼ二択という状況で、グーグルが70〜80%(2021年時点)のシェアを握る。根幹を支える検索エンジンや検索広告の技術では、それをも上回るグーグルの独壇場とみられ、今後もヤフーが技術面でグーグルに首根っこをつかまれている構図に変わりない。

検索エンジンと検索連動型広告の技術でグーグルを脅かす存在が台頭してこない限り、ヤフーはこれに頼らざるを得ず、公取委としてもグーグルの自制を促すほかない状況だ。

巨大IT企業を“抑止”できるか

あらゆる領域で圧倒的優位に立つビッグテックは、かねて各国政府から競争上の問題が懸念されてきた。EUなどが先行して法規制に動く中、日本政府もここに来て対応を急いでいる。

公取委は処分を下した4日後の4月26日、アップルやグーグルなど、スマートフォンの基本ソフトやアプリストアなどの分野で影響力を持つ巨大IT企業を規制する新たな法案をまとめ、国会に提出した。

法案では禁止行為をあらかじめ複数規定し、違反が認められた場合には関連する商品・サービスの売り上げに対して20%の課徴金納付を命じる。遵守状況について定期的報告を求めるなど、事業者との間で継続したコミュニケーションを強化することで、規制の実効性確保につなげるという。

今回の検索広告をめぐる行政処分は、グーグルに対してどれだけの抑止力を発揮できるのか。同社のみならず、ビッグテック全体と公取委との力関係を占う試金石になりそうだ。

著者:森田 宗一郎