終盤国会の最大の焦点となる巨額裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、岸田文雄首相(自民党総裁)が窮地に追い込まれている。いったんは与党案取りまとめで合意した公明党が、土壇場で自民との共同提出を拒否したことで、「与党内対立」が露呈したからだ。

慌てた岸田首相(自民総裁)や茂木敏充幹事長ら自民執行部は、やむなく5月17日に党独自案をまとめて国会に提出、これを受けて同22日から衆参の政治改革特別委員会での法改正を巡る与野党協議が本格化する。ただ、この自民案には野党だけでなく与党内からも「極めて不誠実な内容」(閣僚経験者)との声が噴出しており、政権の命運も懸けて早期決着を目指す岸田首相は、厳しい対応を迫られることになる。

法改正の具体的内容について足並みそろわず

その一方で、法改正の具体的内容については、野党側も足並みがそろっておらず、会期末が1カ月後に迫る中、与野党双方に「会期内決着は困難」(公明党幹部)との見方も広がる。その場合、政府は会期を延長せざるをえないが、これには岸田首相がなお執念を燃やす会期末解散の可否が絡むため、終盤国会での政局大混乱の要因にもなりかねない。

しかも、そのこと自体が「与野党双方が裏金事件再発防止のための法改正より、政局的対応を優先する異常事態」(政治ジャーナリスト)ともなり、裏金事件に対する国民の政治不信をさらに拡大させることは避けられない。規正法改正での拙劣な対応もあって支持率低迷が続く岸田政権にとって、「近い将来、破れかぶれ解散か早期退陣かの重大な選択を迫られる」(自民長老)ことも想定され、政局は会期末に向け緊迫化しそうだ。