物流業界の「同意なき買収」が、新たな展開を迎えている。

小売業向け3PL(倉庫から配送まで物流の一括受託)大手のAZ‐COM丸和ホールディングス(丸和HD)は、低温食品物流を手がけるC&Fロジホールディングスに対し、5月2日から6月17日まで株式公開買い付け(TOB)を実施している。C&Fの同意を得ずにTOBを進めている状態だ。

そこに対抗提案を持ちかけている1社が明らかになった。宅配便大手・佐川急便を擁するSGホールディングス(SGHD)だ。5月17日にC&Fが候補の1社であることを明らかにした。SGHDは今回の件を含めさまざまな検討をしているとし、「決定した事実はない」としている。

これを受けて5月20日、C&Fの株価はTOB価格が引き上げられるとの思惑から前週末比700円高の4500円とストップ高となり、年初来高値をつけた。5月21日終値は4890円となっている。ますます過熱する物流業界での買収劇。この後どうなっていくのか。

丸和の社長は大株主

丸和HDはなぜC&Fの同意なきTOBに踏み切ったのか。同社が公表している経緯はこうだ。

2022年10月、C&Fに対して事業面での協働や経営統合を提案し協議してきた。2023年10月にシナジーが限定的なこと、企業文化が異なる点などを理由に検討を中止すると通達されたが、丸和HDは買収によってシナジーを早期に発現できると考え、今回のTOBに至った。

この説明では、丸和HD側が提案を断られ、強引に買収に出る構図にも見えるが、両社にはもう少し深い関係がある。

そもそも丸和HDの和佐見勝社長は、C&F株式を3月時点で3.35%保有する大株主の1人。C&F前社長の林原国雄氏とは、C&Fが上場した2015年頃から懇意にしてきた。そうした関係のうえで、両社は業務提携も含め、具体的な話し合いを重ねてきたという。