日本最大のラムサール条約登録湿地、釧路湿原で太陽光発電施設の進出が続く。絶滅危惧種で天然記念物のタンチョウやキタサンショウウオが住む湿原の乾燥化に拍車がかかるとの懸念が高まる。

国、北海道、市町村、環境団体でつくる協議会は希少生物の生息地を避けるよう事業者に呼びかけ、釧路市は条例づくりに着手した。だが押し寄せる太陽光パネルの波に歯止めがかからない。そんななか、環境団体が土地の買い取りを進めている。

地元の環境団体や専門家が乱開発から守ってきた

「釧路湿原は、1972年に出版された田中角栄氏の『日本列島改造論』で開発候補地点とされ、将来のあるべき姿をめぐって地元で議論になった。海岸から6キロ以上離れた湿原地帯は守ろうということで合意し、国立公園を目指す運動に発展しました。環境省は背中を押され、1987年に国立公園が誕生。湿原を守りたいという地域の人たちの声が、今の太陽光発電を問題視する市民運動につながっています」

こう指摘するのは、元環境省自然環境局長でIUCN(国際自然保護連合)日本委員会会長の渡邉綱男さん(68歳)。原生的な自然が残る約2.6万ヘクタールの湿原を保全するため、地元の環境団体や専門家は熱心な活動を続けてきた。

その1つ、NPO法人・トラストサルン釧路は、市民が自然環境の保護などを目的に土地を購入し管理するトラスト運動に取り組み、これまでに59カ所、約607ヘクタールの土地を取得した。「湿原保護基金」への寄付を募り、土地を取得している。

自然保護地になっている丘陵地から湿原を見下ろすトラストサルン釧路のメンバー。丘陵地の林は、湿原に水を供給する水源地域になっている(写真提供:トラストサルン釧路)

サルンはアイヌ民族の言葉で湿原を意味する。釧路湿原が国立公園になった翌年の1988年に発足した。国立公園区域は湿原の中央部やわずかな丘陵地に限られる。

このため、国立公園区域外の周辺丘陵地や南部湿原を対象に買い取りを進めてきた。丘陵地は湿原に水を供給する水源地域であり、南部湿原は市街地拡大が心配されていた。