野球には、科学的に謎の多い「送りバントの有用性」など、「なんで?」と思ってしまう不思議な疑問がたくさんあります。こんな疑問に「科学的な見地」で答えたのが『野球の科学 解剖学、力学、統計学でプレーを分析!』です。

「ピッチングを科学する」「バッティングを科学する」「統計で科学するセイバー・メトリクス」の3章で構成される本書から、今回は、「バッターが本当に嫌がる変化球の『特徴』」に迫ります。

「変化球」とはそもそもどんな球なのか

最近は投手が投げるボールの「回転」「回転速度」「回転軸」、そして「球の軌道」といった球質を測定するトラッキング・システムが日米のプロ野球で普及し、客観的に投球を評価できるようになりました。

とくにボールの回転速度は、昔から何となく「キレがある」「スピンの利いた」などと、投球を評価する中で言われてきました。この回転速度を数値として表せるようになったのは画期的なことです。

しかし、このような球質は専門家でもその評価が難しく、良しあしを述べる際は注意が必要です。詳しい理論はほかの書籍を見ていただくとして、ここでは野球指導の中で「どのように生かすべきか」を述べたいと思います。

まずは根底にある理論を、確認しておきましょう。

回転するボールは、マグヌス効果によって軌道が変化します。つまり曲がります。そのため、投手は「自分が曲げたい方向にボールを回転させる」ことがポイントです。

投手が変化球を投げるときに考えることは、大きく分けると以下のような2つでしょう。

① 速度が遅くなっても大きく曲げたい
② 曲がり方は小さくても、速度が速い球を投げたい

たとえば、代表的な変化球であるカーブの球速は遅いですが、大きく曲がります。そのために打者の目が惑わされます。

一方、スライダーの球速は速いので、打者は「ストレートだ」と思って振りに行きます。すると途中で曲がるために打ちにくいのです。つまり、一口に変化球と言っても、その効果はさまざまで、「これが正しい」とは言えないのが難しいところです。