リクルート創業者、江副浩正の軌跡を描いた書籍『起業の天才!』が5万部のベストセラーとなっている。リクルート事件を覚えている世代にとっては「犯罪者」のイメージが強い江副浩正だが、本書では「イメージと違った」と驚きとともに受け止められた。

では、リクルート事件後に生まれ、江副浩正という名前を歴史の教科書でしか知らない世代にとって、本書にはどのような学びがあったのだろうか。

17歳で初めての起業を経験したのち、大学に行かずにKakedasを創業、CEOを務める22歳の渋川駿伍氏のもとには、全国から多くの中学生、高校生が起業の相談に訪れるという。「本書は、そういった若い人にこそ読んでほしくて、薦めているんです」と語る渋川氏に、その理由を解説してもらった。

江副浩正はルサンチマンタイプだった?

江副浩正さんのような経営者は、本当に稀有な存在で、22歳の僕の世代にはあまりいないタイプです。隠そうとしてもにじみ出る、なんとも言えないあやしさ、表現しきれないダークな部分。『起業の天才!』では、あまり深くまでは描かれていませんが、それでも十分感じ取ることができました。

一方、いまのビジネスシーンにいる僕と同年代の起業家は、すごくピュアでクリーンなイメージが強く、ダークな部分が露わになっている人はほとんどいません。

江副さんの人柄には、2つの要因があると思いました。1つは原体験がどこにあるか。2つ目は人との関係性です。

江副さん自身は、起業家になりたいというわけではありませんでした。どちらかと言えば、「マイナスからの脱却」のような、周囲との関係性によって作られた自己否定からどう抜け出すかという、ある種のルサンチマン的なものを感じます。

特に、幼少期のつらい体験を読むとそう思います。しかし、その原体験はどうしようもないものなんですよね。過去の記憶を作り変える以外には、その痛みを癒やせるわけがなく、とどまらない承認欲求や自己顕示欲が表出してしまう。

ビジネスとしては、そこが、どんどん企業規模を大きくしていく過程で、転換点に至ったときに、ダークサイドへと突っ込んでいってしまった1つの要因にもなったのかもしれません。

僕自身も、幼少期に周囲との壁を感じていて、江副さんが抱えていたものとまさに同じ悩みを抱えていましたから、ルサンチマン的な感覚は否めません。身の回りに起業家もいませんでしたし、決して恵まれた環境ではなかったという点で、共通点があると感じました。