昨年からの新型コロナウイルス流行により、東京は緊急事態宣言の発出、延長、解除が繰り返されている。「密」を避けるよう声高に要請され、人の多い都会で暮らすこと自体に疲れを感じている人も多いだろう。しかし地方移住を具体的に考えたとき、ネックになるのが、「仕事」である。生活をしていくためには、東京を離れられない――。

そんなとき、助けとなる制度があるのをご存じだろうか。「地域おこし協力隊」である。国が地方移住を進めるために創設した制度だ。実際に「地域おこし協力隊」に応募し、地方移住を実現した人を訪ねた。

(本稿は『東京を捨てる コロナ移住のリアル』の一部を抜粋、再構成したものです)

霞が関官僚から地域おこし協力隊に

丹下さんは神奈川県横浜市の出身。大学卒業後は自然環境業務を行うレンジャーとして働くことを希望し、2009年4月に環境省にキャリア官僚として入省した。

最初は霞が関の本省に勤務したが、3年目からは念願の現場レンジャーとして国立公園の管理にあたった。それが竹野町を含む、山陰海岸国立公園だった。西は鳥取県鳥取市から東は京都府京丹後市に至る山陰海岸国立公園の管理事務所が兵庫県豊岡市竹野町にあったのだ。

都会育ちの丹下さんにとって、竹野町での生活はすべてが新鮮だった。春夏秋冬にメリハリがあり、海も山も姿を変える。夏は観光客で賑わう。竹野浜海水浴場が徒歩圏内にあり、こんな綺麗な海をプライベートビーチのように使える贅沢さに感動した。

環境省の職員として、国立公園内に携帯の電波塔を建てる際の許認可業務など、役人としての管理業務も多かったが、レンジャーとして地域の人とコミュニケーションをとりながら、国立公園の利用を活性化するために遊歩道の整備などをする仕事が楽しかった。