日本における貧困問題の解消に向けて、大きなネックになっているのが「住まい」だ。家がないと、履歴書に書く住所がなく、求職活動が難しくなる。ところが、低所得者にとっては敷金、礼金などの初期費用の高さが壁となり、ネットカフェや脱法ドミトリー(相部屋の格安宿泊施設)などに流れてしまうケースも少なくない。

貧困に陥った若者たちの実態に迫る4日連続特集「見過ごされる若者の貧困」3日目の第1回は、若者の住まいの貧困について、ジャーナリストの藤田和恵氏が迫る(1日目、2日目の記事はこちらからご覧ください)。

【3日目のそのほかの記事
第2回:コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境
第3回:「小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮

1部屋に8人が暮らすワンルームマンション

東京・新宿駅から歩いて20分ほど。行きかう人々や車の喧騒が次第に遠ざかっていく。時刻は夜9時を回ったころ、高層ビルの明かりが途切れ、薄暗い住宅街へと入る。街灯だけでは心もとない道路を宅配ピザ店やコンビニの明かりが照らす。その一角に目的のワンルームマンションはあった。どこにでもあるレンガ色の5階建ての建物である。

このマンションに暮らすミユキさん(仮名、30代)から市民団体でつくる新型コロナ災害緊急アクションに助けを求めるメールが届いたのは今年5月。駆け付けた事務局長の瀬戸大作さんにミユキさんはこう訴えた。

「シェアハウスのようなところだと思って入ったら、1部屋に8人も住んでいたんです。しかも男女一緒。部屋の持ち主の男がしょっちゅうやって来て、自分はすごい情報網や人脈を持っていて、やろうと思えば何でもできる、どこに引っ越してもわかると言って脅してくる」

瀬戸さんはミユキさんに家賃を払ったうえで、人目につかないよう荷物を運び出すことを提案。この日は“夜逃げ”の決行日だった。同アクションの同行取材を続けていた私も手伝うことにする。