現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

今回紹介するのは「53歳の秋に大学卒業以来勤めていた会社から、突如これまでの勤務態度、成果を問い詰められその結果追われる形で退職しました」と編集部にメールをくれた55歳の男性だ。

「取引先からクレームも来てんねん」

「ミスも多いし、取引先からクレームも来てんねん」

関西地方の会社で働いていたマナブさん(仮名、55歳)は上司から突然呼び出され、こう告げられた。ちょうど2年前のことだ。

同僚に比べて作業が遅く、ミスが多い自覚はあった。上司は改善すべき点をリポートにまとめてこいという。マナブさんはその日の晩、パソコンに向かったが、いっこうに筆が進まなかった。それまでも自分なりに一所懸命やってきたつもりだったので、何を改善すればいいのかわからなかったのだ。

以前から、自分は発達障害なのではないかとの懸念があった。障害がわかれば改善点も見えてくるのではないかと考え、上司に心療内科を受診したいと申し出たものの、「そんなとこ行ってもしゃーない。(発達障害による特性など)誰にでもあることやし」と受け流された。とにかくリポートを出せの一点張りでしたと、マナブさんは振り返る。