これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。

たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。

そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「小学校の頃からずっと野球をやっていたため、中学校でも野球部に入ったのですが、人間関係がうまくいかずに部活を辞めてしまいます。そこから、家でも学校でももめることが多くなり、徐々に居場所を失っていき、最終的にグレてしまいました。

その後、暴走族で副総長(※正式には副会長とのこと。地域によって呼び名が違うらしい)を務めるまでになって。根っからの不良でしたね」

不良少年の更生を助けた奨学金制度

今回話を聞いたのは、藤岡優作さん(仮名・58歳)。誰もが知る超大手IT企業の上場期に総務・法務として関わるなど豊富なビジネス経験を持ち、58歳になった現在もスタートアップ企業の監査役として働いている。

そんな輝かしいキャリアとは裏腹に、10代の頃は不良少年だったと自身の過去を明かす。

勘のいい読者はすでに察しているだろうが、この連載に登場するからには、当然ながら彼も奨学金を借りた1人だ。

暴走族の副総長が奨学金……。すでに波乱万丈な人生模様を聞ける予感が満載だが、まずは子ども時代から話してもらおう。