「片腕男子」というチャンネル名でYouTubeに配信された、1本の動画。殺風景な診察室で、緊張した面持ちの青年が医師の話にうなずいている。彼は今、「血管肉腫」という血管内側の細胞の悪性腫瘍を左手に患っていると告げられたばかりだ。それは衝撃的な宣告だった。なぜなら彼は、「ただのかすり傷」だと思っていたからだ。

男性の名前は、宮野貴至さん(25歳)。このとき(2022年6月)は、都内の大学に通いながら芸人を目指していた。宮野さんは医師の話に黙ってうなずき、診察室には言葉を選びながら話す医師の声だけが響いている。

医師「手術として外科的にやるとなると、かなり厳しい話ですけれども、左の肩ごと、上腕骨、肩甲骨も含めて手を取れば、治る確率はあると思うんです。

ただもちろん、それってかなりご本人にとっても、利き腕ではないにしてもね、手がなくなっちゃうし、生活だって変わっちゃうから、すごく決断としては難しいし、もう一つは、血管肉腫自体の治療成績って、あんまり実は良くないんですね……」

ここで医師は少し言いよどんで、宮野さんに投げかける。

医師「数字で言ってもいい? 数字で言うと、大体2年後に助かる人が半分なんですよ、2年後に命がある人が半分

まさに寝耳に水の話だった。隣に座る付き添いの両親は、一人息子への残酷な宣告にどんな顔をしているのだろう。両親の気持ちを考えると、心が苦しくなった。

かすり傷の「かさぶた」をくり返しむいていた

話は5年ほど前にさかのぼる。その当時宮野さんは、左手の親指にしこりがあるのを感じていた。だが痛みはなく、普段通りの生活送っていた。あるとき、仲間とバスケットボールをしたという。その際、親指のしこりにボールが擦れ、かすり傷を負ってしまった

すぐにかさぶたになったが、誰しも経験があるように、かさぶたが気になってむいてしまった。それが生傷になり、またしばらくすると、かさぶたになる――そんなことを5年ほどくり返していたという。