これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。

たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。

そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金」とは

「今の職場は私立大学を卒業した坊ちゃん・お嬢様ばかりなので、奨学金の話をしても『まだ返していないの?』と、曇りのない瞳で言ってくるので腹が立ってしまいます。

同じ価値観を持つ同性の友達を探すのも苦労するのに、異性となると、いよいよ相手が見つかりません。周囲は医療関係者も多いので、社会人になった当初は『医者と付き合いたいな』と思っていましたが、いざ話してみると、価値観が違い過ぎて、何を言っているのかすらわかりませんでした。彼らが当たり前のように知っている文化とか価値観を、私は知らないんです」

奨学金には大きく分けて3種類ある。無利子で借りられるが、採用基準がそれなりに厳しい第一種奨学金。親が高所得でない限り申請すれば通るが、利息のかかる第二種奨学金。そして返済不要だが、採用人数は非常に少ない給付奨学金である。

今回、話を聞いた九州出身の山野祐実さん(仮名・26歳)は、第一種奨学金の中でも選ばれた者しか借りられない「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金」(通称α型)/以下「所得連動返還型無利子奨学金」)の対象者だったという。

自身の半生を「貧乏だった」と振り返る彼女は、奨学金を借りることでどのように人生を変えたのか? そして、人生を変えた先で知ることになった苦悩の味わいとは?