「テレビゲーム」は子どもがやるものと思われがちですが、書籍や映画ともまた違う独自のシリアスな、あるいはユニークな作品が多数あります。その魅力は奥深く、大人の趣味として楽しめるほどに成熟しているといっても過言ではありません。

そこで、この連載では、ゲームの評論やコラムを10年以上書き続けているゲームライター、いわばゲームを遊ぶプロである渡邉卓也氏が、ゲーマーからは人気でも一般的にはあまり知られていないであろう著名な作品や傑作を紹介します。

第30回は、ゲーム業界に革命をもたらした『ポケットモンスター 赤・緑』について取り上げます。

発売当時は「みんなで遊ぶRPG」は珍しかった

もはや「ポケットモンスター」シリーズは、知らない人のほうが少ないのでは?というくらいに人気ですし、ポケモンという存在は日本どころか世界中で愛されています。そんなすばらしいポケモンの原点は、ゲームボーイで1996年に発売された『ポケットモンスター 赤・緑』です。

本作の何がすごかったのかを語るには、まず当時の時代背景を知らなければなりません。1996年はNINTENDO64やPlayStationが現役のころで、テレホーダイは存在しましたが、多くの家庭にインターネット環境が根付いているわけではありませんでした。

今やゲーム機もインターネット接続は当たり前になっており、オンラインで世界中の人と気軽に遊べるようになっています。しかし1996年当時はまだオンラインゲームもそこまで世間になじんでおらず、「みんなで遊ぶRPG」というのは珍しいものでした。

そう、『ポケットモンスター 赤・緑』の大きな魅力は、それまで1人で遊ぶゲームだったRPGを拡張し、マルチプレイ(複数の人と一緒に遊ぶ形式)のゲームとしてとらえなおしたところにあるのです。