だが、放送終了後に発売されたDVDが大ヒットし、再放送も話題を呼んだ。視聴率が高くなかったドラマのDVDがヒットするのは異例の現象で、その後、映画も2作品作られた。映画第1作の公開時には「奇跡の映画化!」と宣伝されていたほどだが、それも大げさではない表現だろう。

簡単に言えば、広くはないが、観る者の心に深く刺さったドラマが、時間をかけてその領域を広げていったと言える。

主人公のぶっさんを演じた岡田にとってはこれが、単独初主演となる連続ドラマで、2003年の映画版も初主演映画に。その後、多くの映画に主演し、俳優としての評価を高めていく。

『池袋〜』に出た後の長瀬智也がそうだったように、『木更津〜』に出た後の岡田も男性人気が高まり、当時のジャニーズアイドルとしては珍しく、男性ファッション誌の表紙を飾ることもあった。今年の3月にはX(旧Twitter)で『木更津〜』に触れ「#代表作がある幸せ」とポストしている。

池袋ウエストゲートパーク 今も伝説のドラマ作品として挙がる『池袋ウエストゲートパーク』。出演者の豪華さがたびたび話題になる(画像:Netflix作品ページより)

『不適切にもほどがある!』との共通点

『池袋ウエストゲートパーク』は原作があった一方で、『木更津キャッツアイ』は完全なオリジナル作品である。そして、その後も磯山晶プロデューサー・宮藤官九郎脚本によるタッグは、基本的にオリジナル作品を作り続け、今年1月に同枠で放送された『不適切にもほどがある!』まで続いている。

その意味で、一連の作品群の根幹を成すような作品であり、さらに『不適切〜』にも通じる共通点がある。

それが、主人公が死ぬ、という点だ。しかも、視聴者はそれを物語の終盤ではなく、序盤もしくは中盤で知ることとなる。つまり、いずれ死ぬ人が主人公のドラマとして見続けるのである。

宮藤官九郎作品では死が描かれることが多く、『11人もいる!』(2011年、テレビ朝日)は大家族を死んだ元妻が幽霊として見守る話だし、脚本に加え監督も務めた映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)は、冒頭で神木隆之介演じる主人公が死亡。輪廻転生を繰り返しながら、地獄と現世を行き来する話だ。

同映画の公開時に、作品に死の匂いがすることについて、筆者は宮藤にインタビューで直接聞いたことがある。すると「死ぬことと生きることに、ずっと興味がある」としたうえで、「死に対する自分のスタンスや印象が、時とともに変わってくるからやり続けるんだと思います」とも語っていた。

さらに「『木更津キャッツアイ』のときは、生きてる人間の目線だったんですよね。まだ死が身近ではない目線で書いていたんですよ。今回(筆者注:『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』)は、自分自身もあのときよりも死に近づいているから、真面目な感じを回避したかったんですよ。きっと、この先どんどんそうなっていくんじゃないかと思います」と変化を語ったうえで今後を予想している(「宮藤官九郎が語る“主人公を死なせる理由”」、2016年6月24日配信)。