東海道新幹線で車内販売などを担当しているパーサーの新人研修を取材。コーヒーの入れ方にもワゴンの押し方にも「基本動作」があり、ワゴンが行きすぎたりバックしたりするのも、理由がありました。

コーヒーにも「基本動作」

 東海道新幹線で車内販売などを担当するパーサー。いま、その新入社員研修が実施されています。

「基本動作です。いまのうちにクセを付けましょう!」

 東京某所にある研修施設では、指導員がそんな声を新人たちにかけていました。

 このとき行われていた研修は、コーヒーの提供について。その入れ方、座席への身体の向け方、座席のテーブルを出す方法など様々な「基本動作」があり、それを学んでいる最中です。ちなみに、乗客の手前からマドラー、砂糖、ミルクの順に置くとのこと。

 新入社員の樋口 麗さんは「ひとつの動作にもルールや順番があり、言葉もニュアンスではなく正確に伝えるというのは想像以上に大変でした」と話します。

 また「こうした基本動作があるので、パーサーが大勢いてもクオリティーを保ってサービスを提供できるのだと感じました」と新入社員の廣瀬冴子さんは話し、樋口さんもうなずきます。

 ちなみに、ホットコーヒーが入れられた車内販売のポットは、何かを混入させられるといった事態を防ぐため、カギがないと開かない仕組みだそうです。

 この研修施設には、実際の新幹線車内を模した設備も存在。新入社員の樋口さんと廣瀬さんは、その設備でこれから初めて、車内販売のワゴンを使います。

なぜちょっと行きすぎる? バックしてから動く? 車内販売ワゴンの謎

「まっすぐ押すだけでも難しかったです。神経を使いながら押しているというのを知りました」(新入社員の樋口 麗さん)

「座席へ寄せるのが難しく、ワゴンが座席にあたりそうになってしまいます」(新入社員の廣瀬冴子さん)

 ワゴンの動かし方にも「基本動作」があり、例えば、難しいという座席への寄せ。車内販売で、声をかけてもワゴンはすぐに止まらず、少しすぎてからバックしてくるのを不思議に思ったことはないでしょうか。

 これはワゴンを座席に寄せるためです。声をかけられワゴンを止めるとき、邪魔にならないよう声をかけた乗客の席にワゴンを寄せるのですが、ワゴンの車輪は前輪しか曲がらないため、横に動かして寄せることができません。そのためいったん、ワゴンを少し斜め向きに行き過ぎさせ、バックしながら座席に寄せるのです。クルマの縦列駐車をイメージすると、分かりやすいでしょう。

 ちなみにワゴンの重さは、おおよそ成人男性1人分とのこと。

 さて、販売が終了しパーサーが再びワゴンを動かすとき、いったんバックしてから前に行くことについても、不思議に思ったことはないでしょうか。

ユラユラしているように見えるパーサー もちろん理由がある

 車内販売のワゴンは大きいため、その前方の下付近はパーサーにとって死角になります。そのため、販売を終えて再びワゴンを動かすとき、そのまま前に進めると、その死角を確認しないまま前に進めることになってしまいます。

 万が一、ワゴンの死角に乗客の物や足があっては大変です。そこでいったんバックして、前方下の死角に問題がないことを確認してから、ワゴンを前に進めるのだそうです。

 車内販売でワゴンを押すパーサーが、身体を左右に少し揺らしながら進んでいる姿も見られますが、これもワゴン前方下の死角をチェックするためです。

 コーヒーの入れ方、ワゴンの押し方をはじめ、様々な基本動作がある東海道新幹線のパーサー。コロナ禍のため集まるのが難しいなか、東海道新幹線の車内販売を担当するジェイアール東海パッセンジャーズでは、オンライン教育も活用するなどして研修を進めているとのこと。

「私は店員さんを呼ぶのが苦手なタイプなので、そうしたお客様の声に気づけるパーサー、お声をかけていただきやすいパーサーになりたいです」(新入社員の樋口 麗さん)

「人の喜ぶ顔を見るのが自分の喜びで、パーサーはそれができる仕事です。多くのお客様に喜んでいただけるサービスを提供したいです」(新入社員の廣瀬冴子さん)

 ジェイアール東海パッセンジャーズは2021年度、約200名のパーサー職社員を採用。4月1日の入社後、約2か月間の研修を行い、6月中旬の独り立ちを目指します。