かつてのRV/SUVといえば、車体の背面にスペアタイヤを備えているスタイルが一般的でした。クルマの変化とともに消えていきましたが、そもそもなぜ、あの位置だったのでしょうか。

本格派の証? 消えていく背面スペアタイヤ

 2021年現在、自動車業界では長らくSUV人気が続いています。その前のブーム、1990年代のいわゆる「RVブーム」の頃のクルマとは、フォルムも大きく異なるものが多いですが、かつてのRV/SUVに付き物ともいえたものが、ほとんどなくなっています。「背面のスペアタイヤ」です。

 最近のSUVでリアゲートにスペアタイヤを取り付けているのは、スズキ「ジムニー」やメルセデス・ベンツGクラスのほか、日本向けが生産終了となったばかりの三菱「パジェロ」くらいでしょう。

 しかしながら、かつてのRV/SUVでは、悪路走行を想定したパジェロなどだけでなく、オンロード向きである日産「ラシーン」やトヨタ「RAV4」なども背面にスペアタイヤを取り付けていました。

 RVブームの火付け役となったパジェロのヒット以降、ファッションとしての「RVブーム」が起こり、背面スペアタイヤがそれらのアイコンとなった側面がある――三菱自動車は以前、このように説明していました。

 そもそもパジェロは、三菱がノックダウン生産(外国製品の主要部品を輸入し現地で組み立て販売を行う方式)していたジープの派生車であり、背面のスペアタイヤはジープ譲りのスタイルです。道なき道を走るような、極限環境での使用を想定したジープにとって、スペアタイヤはなくてはならないものでしょう。

 ただ、車室内に格納されていれば、交換の際に荷物を取り出す必要があり、車両の下にあれば、砂漠や泥地では車両の下に潜れない――このような状況を想定して、ジープは背面にスペアタイヤを取り付けていたそうです。加えて、この位置ならば日常の点検がしやすいというメリットもあったといいます。

背面のスペアタイヤはなぜなくなった?

 そもそもSUVに限らず、いまはスペアタイヤ自体を積まないクルマがほとんどです。背景には、燃費の重視や軽量化、道路事情の改善、タイヤの耐パンク性能が向上したことなどが挙げられます。

 また、背面にスペアタイヤを取り付けるには、リアゲートのヒンジ(ちょうつがい)を強化するなど、ボディー側の強度も必要で、さらに重量が増してしまうと三菱自動車は話していました。

 デザインとしても、いまのSUVはリアゲートの傾斜がきつくなっているなど、スペアタイヤの取り付けは全く考慮していないであろうモデルがほとんど。逆にいえば、付き物だったスペアタイヤをなくしたことで、リアデザインが自由になった側面もあるのかもしれません。

 ただ、ジムニーは違います。

 2018年に20年ぶりのモデルチェンジとなった現行ジムニーは、背面のスペアタイヤも踏襲し、なおかつより箱型のデザインになりました。

 そのジムニーのスペアタイヤカバーは、まさに多種多様なものが販売されており、すれ違うクルマごとに異なるデザインが見られるほど。スペアタイヤやそのカバーが、個性を引き出すひとつのアイコンになっているようです。