サイクリングをする人が増えているいま、サイクリングを通して国内外に日本の魅力を発信するため、国が「ナショナルサイクルルート」を指定しています。全6ルートのなかには、絶景のほか鉄道にもゆかりのあるポイントが多数存在します。

「世界に認められた絶景」や「広大なスケール」を楽しむサイクリング

「運動不足解消」「エコ志向」を後押しに自転車ブームが続くなか、国が「ナショナルサイクルルート」の指定を行っています。

「ナショナルサイクルルート」とは、サイクルツーリズムを推進を国内外にアピールしていくことを目的に、ソフト・ハード両面から一定水準を満たすルートを、サイクリングロードのいわば"日本代表"として国が指定するものです。

 2019年に最初の3ルートが指定されると、2021年5月に第2弾の指定ルートが発表。北海道の「トカプチ400」、千葉から和歌山県を走る「太平洋岸自転車道」、富山県の「富山湾岸サイクリングコース」が新たに選ばれました。

 記事では、これら計6カ所になった「ナショナルサイクルルート」の各ルートをご紹介します。

●「トカプチ400」
 
 北海道の十勝平野を中心に周遊する総延長約400kmのルートです。

 特徴は、なんといっても北海道ならではの広大なスケールです。日高山脈と十勝平野の大パノラマが、走る人々を楽しませます。一方で北部は険しい山岳ルートとなり、標高1000m級の峠が待ち受けています。特に、ルート最北端にある国道273号の「三国峠」は標高1139m、北海道の国道のなかで最も標高が高い峠となっています。

 さて、長距離ライドの旅人にとってオアシスとなるのが、地元グルメや温泉です。 ルート上には道の駅が複数設定されていますが、現地の畜産や酪農と一体で運営される「ファームレストラン」も多く見られます。また帯広〜池田間のルート上にある十勝川温泉で疲れを癒やすのもいいかもしれません。

 鉄道ファンなら忘れてはいけないのが、三国峠の手前の糠平湖にある、旧国鉄士幌線のタウシュベツ川橋梁です。美しいアーチを描く「廃墟」は、ルート上にある展望台から眺めることができます。

●「富山湾岸サイクリングコース」

 富山県の氷見市から朝日町までの富山湾岸沿いに整備された延長102kmのコースです。

 富山湾は「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟しており、外国人旅行者にも人気のエリアです。ルート上にはJR氷見線の車窓でも有名な高岡市の「雨晴海岸」のほか、 富山湾と北アルプスをオレンジ色に染め上げる風景の美しさから「日本の夕陽100選」にも選ばれている「生地海岸」などがあり、まさに絶景尽くしです。

全長約1500km!壮大スケールな自転車道

●「太平洋岸自転車道」
 
 千葉県銚子市から神奈川県、静岡県、愛知県、三重県を経て、和歌山県和歌山市の加太港までを結ぶ、太平洋岸を中心に延長1487kmにもおよぶ壮大なスケールの自転車道です。全線走破の手助けとなるよう、各県が統一基準の案内標識や関連施設の設置を進めています。

 名前のとおり、太平洋岸をまるごとトレースするルートになっており、房総半島から伊豆半島、渥美半島、紀伊半島をぐるりひた走り、それぞれの岬を通過します。

 その沿線には、熱海や伊東のほか「ユネスコ世界ジオパーク」の自然豊かな伊豆半島の海岸線、富士山から浜名湖にリアス式海岸の伊勢湾、白崎海岸、1本の滝としては落差日本一の那智の滝や白浜……という感じに、日本を代表する観光地や景勝地をまるごと満喫できる「欲張り」なルートです。

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 ここからは、2019年に「ナショナルサイクルルート」の第1弾として指定された3つのルートを紹介します。

●「つくば霞ヶ浦りんりんロード」

 茨城県の14市町村にまたがる延長約180kmのルートです。平野部に位置するため、大部分がフラットな、サイクリング初心者にも走りやすいルートといえます。またヒルクライム好きのためにも、「日本百名山」のひとつにも数えられる「筑波山」の中腹をぐるっと周る山岳コースが設定されています。

 霞ヶ浦の湖岸周遊コースのほか、鉄道好きは見逃せない「旧筑波鉄道コース」もあります。1987(昭和62)年まで常磐線の土浦駅と水戸線の岩瀬駅を結んでいた筑波鉄道筑波線の廃線跡をほぼまるごとサイクリングロードに再整備したもので、旧駅舎や施設の遺構が沿線に点在しています。

米CNNで絶賛!"世界で最もすばらしいサイクリングコース"とは

●「しまなみ海道サイクリングロード」
 
 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ延長70kmのルートで、日本のサイクリングロードとしては初となる、自転車を漕ぎながら海峡を横断できるルートです。

 途中には瀬戸内海に浮かぶ向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島の6島の島内を抜けていきます。海を渡る箇所は自動車道「しまなみ海道」に併設された自転車歩行者道を通行します。

 しまなみ海道にある7つの橋はそれぞれ形式が異なっていることから“橋の美術館”とも呼ばれています。瀬戸内海の多島美と橋の造形美が織りなす絶景から、米CNNでは「世界で最もすばらしい7大サイクリングコース」にも選出され、国内だけでなく海外のサイクリストたちからも注目を浴びています。

 なお、愛媛県では民宿や飲食店、ガソリンスタンドなどでベンチや空気入れ、トイレ、給水ポイントなどを提供する「サイクルオアシス」の設置を全県ですすめています。本サイクリングロード周辺にも約80か所のサイクルオアシスがあります。

●「ビワイチ」
 
 日本最大の湖「琵琶湖」を反時計回りに一周する延長約200kmのサイクリングルートです。

 最大の特徴は、広い空の下、広大で輝く湖面を見つめて走る爽快感。そして「ビワイチ」のルートから少し「寄り道」することで歴史遺産巡りもできます。比叡山の麓に栄えた里坊や、織田信長が築いた安土城跡、彦根城、近江商人の町並みなど、数多くの名所があります。海津大崎や彦根港からは、国の名勝および史跡である竹生島へ、近江八幡市の堀切港からは、「琵琶湖唯一の有人島」沖島へそれぞれ渡ることができます。

 なお、琵琶湖の東側を走る近江鉄道では、電車内に自転車をそのまま持ち込める「サイクルトレイン」が利用可能で、周辺の観光名所を周遊するのに便利です。
 
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 以上、日本を代表する「ナショナルサイクルルート」を6つ紹介しました。この他にも、日本各地にはバラエティ豊かなサイクリングルートが多数存在します。実際に走ってみて、みなさんのイチオシのサイクリングルートを見つけるのもいいでしょう。